第一章 一見さんお断り
壱
「えー。入学したての一年生は高校生活に慣れないと思いますが、今日から部活動体験も始まります。気になる部活に成る可く多く行けるよう、体調に気を付けて生活しましょう。
次に、先生方に連絡です。本日の臨時職員会議の件ですが―」
全校集会も終わり、教室で担任を待っていると、
「なあなあ。黒木は部活動体験、どこに行くんだ?」
と隣の席の水沢が話しかけてくる。
俺は少し考えてから、
「特に決めてないな。けど、バイトもあるし、そんなにキツくない部活を選びたいかな。水沢は、やっぱりバスケ部か?」
と聞き返す。
「勿論。小学生から続けてるし、プロになりたい夢はまだ諦めてないからな。それに...」
と水沢がニヤつく。
全く、此奴の考えることはわかりやすい。
「どうせマネージャーが可愛いとかの不純な理由が大半だろ。」
「流石、黒木!今まで付き合ってきたどの女の子よりも俺の事分かってんなー。」
と水沢が抱きついてきたが俺は
「気色悪い。」
と彼の頭に軽く手刀を打つ。彼とは小学校からの付き合いだが、ウザい程明るい性格は全く変わっていない。
「それにしてもバイトかぁ。まァ、別に禁止されてないから止めやしないけどな。やっぱ、一人暮らしは厳しいか?」
と水沢がさっきと打って変わって心配そうに問うてきた。
「そんなことは無い。ずっとあの家に居るよりはマシさ。」
本当は不安な気持ちも少なからずあるが、数少ない友人に心配させてはいけないと思い成る可く明るく返答する。
「そっか...。でも、辛くなったら直ぐに頼れよ。俺達、親友なんだから。」
と水沢がいつになく優しく言う。
「ああ。ありがとう。」
正面から言われると照れくさいものだ。
流石の彼も自分で言って恥ずかしくなったのか、慌てて話題を逸らす様に
「話を戻すが、部活動体験の件だけど、この部活はどうだ? 若しかしたら、お前のあの力を活用出来るかもしれないぜ。」
と「部活動一覧」と書かれたプリントの同好会の欄を指さす。
そこには
『怪奇解決同好会
活動場所:別棟二階資料室』
とだけ書かれていた。
他の部活欄と比べ、活動内容も一切書かれておらず、ある意味で目を引く項目だった。
「何だこれ。オカルト研究部とは違うのか?」
「さあな。でも、ここは県内屈指の部活動数を誇る辰栄高校だ。そう言う、訳の分からん部活もあるんだろう。どうだ、一つの案として考えてみてもいいんじゃないか?噂だと、会長はかなりの美人らしいぜ。それだけじゃない、お前に勧める理由はここからだ。実はここの会員は皆...」
「お待たせしました。皆さん席に着いて下さい。」
しかし、彼が続きを言う前に担任が入ってきてしまい、そのままホームルームが始まってしまった。
放課後、水沢に続きを聞こうとしたが帰りの担任からの連絡が長引いたため、話しかける間もなく彼は足速に部活動体験に行ってしまった。
まあいい。どうせ行きたい部活も無いし、今日はバイトも休みだ。折角の親友からの提案に乗ってみるとしよう。
俺はその怪奇解決同好会とやらが活動する、資料室へと足を向けた。
────しかし、その時はこの選択が後で俺の学校生活及び人生を掻き乱すことになるとは知る由もなかった。
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