その涙さえ命の色 ※

 日常を暫しはなれて 街に一人

 自由という名の迷路歩いて



 夕闇の道路に こぼれる窓の

 試奏の音に 満ちる昂揚



 開演を待つ人の声 語り合う

 熱い思いに 心かさねて



 黙々と 楽器を抱いて立つひとの

 為人ひととなりさえ滲む音楽



 張りつめた真冬の空気 澄みわたる

 景色のような独奏の音



 やさしさと孤独と人のぬくもりと

 静かに燃える 魂の息



 人の手が奏でる音は生きもので

 涙の色に少し似ている



 旅を経て ふるさとの街 千秋楽

 笑顔ひとつに すべて映して



 年齢も 住む場所 仕事 名前さえ

 知らなくていい ただ気持ちだけ



 言葉など要らない音の世界には

 無限に続く物語がある

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短歌練習帳 青い向日葵 @harumatukyukon

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