考えたら、死ぬ。
千木束 文万
第1話
ただし、条件があります。期限内に物語を完結させなければ、あなたは描写外で死ぬこととなります。
期限は、五百字です。五百字以内に物語を完結させることができればクリアです。
報酬は、ありったけの幸せ!では、開始!
―――おい、待て!……あのアマ、一瞬で消えやがった。どういうことだ?
家でゴロ寝してたら急に現れて、「物語を完結させなければあなたは死にます」なんて、ふざけんじゃねぇ!
確かに、主人公になりたいと思ったことはあるが、文字数制限のある主人公なんて見たことねぇ。
小説ってのは、主人公が自由に行動して、それを作者が文字に起こすもんで、決して主人公が設定に振り回されたりするもんじゃないハズだ。なにか間違ったこと言ってるか、俺。
ん?「292」?……なんだ、この徐々に減っていくカウントは。
もしかして、今現在進行形で、俺の考えは文字にされて行ってるってのか…?
あぁ、そうに違いない。時間的には数秒しか経っていないが、考えるだけで文字に起こされるんなら話が違う。もう「180」かよ、クソ。考えるのは文字数の無駄か?
…いや、考えないと物語の終わらせ方が見えてこないな。何とかして、この物語を完結させねぇと。物語、物語……。ファンタジーなら小説になりそうじゃないか。よし、ファンタジーにしよう。……いや、今は俺が主人公だから、俺ができる内容じゃないと意味ないのか。
そうだ、何か面白い行動をとってれば、それとなく完結するんじゃ―――
田中 大輔 さん。アウトです。五百字を超えたため、あなたは、描写外で死ぬこととなりました。
評定は、Cです。荒い性格により、物語の出来は、一般人よりは少し良い程度となりました。では次に移ります。
ただし、条件があります。期限内に物語を完結させなければ、あなたは、描写外で死ぬこととなります。
期限は、五百字です。五百字以内に物語を完結させることができればクリアです。
報酬は、ありったけの幸せ!では、開始!
―――なんだろう、今の女の人。いきなり目の前に出てきたと思ったら、突然いなくなって。幻覚ってやつなのかな。
でも今の人、黒スーツでバシッとキメてて、格好良かったなぁ。イケメンよりの美女って感じだった。…だけど、のどが疲れてた。
大体の人は目とか足とかなんだけど、のどとは珍しい……。
私の特技「疲労分析」によると、さっきの女性は、ずっと声出しをしてたみたい。すぐにどこかに消えちゃったけど、もしかしたら、消えた先でも、ずっと声出ししてるのかも。
私だけじゃなくて、色んな人の前にパッと現れて、その度に声を張ってたりして。
そして、さっきからだんだん減ってくこの数字が気になる。最初は確か「500」だったと思うんだけど、なんの数字だろ。結構な勢いで減っていて焦るのだけど。
あと、あの女の人がなんて言ってたのかも、すごい気になる。
実は、私の人生に関わるほど重要なことを喋っていたけど、言うだけ言って去ってしまった、とか。このカウントが表しているのは、実は私の残りの寿命、とか。そんな可能性、万に一つもないとは思うけど。大体、単位がわからないし。
はぁ……私が耳の聞こえる人だったら、なんて言ったか、わかったんだろうなぁ。
―――綾森 深聡さん、おめでとうございます。クリアです。あなたの人生には、多くの幸が待ち受けていることでしょう―――
考えたら、死ぬ。 千木束 文万 @amaju
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