当方、恥ずかしながらお茶碗に残った米粒は食べずに捨ててしまうことがしばしばあるタイプ……。ですが、この小説を拝読し、お米は最後のひと粒まで食べよう、そう思えました。
農業への造詣が浅いので大それたことは言えませんが、農業というお仕事の内容や流れ、そのやりがい、大変なこと、いいことーーそういったものが初心者にもわかりやすい言葉で書かれており、大変勉強になりました。これぞお仕事小説!
農業知識もさることながら、物語としての完成度も高いので非常にサクサクと、ノーストレスで拝読させて頂きました。
食欲の秋、そして新米の秋。お米が美味しい季節になりましたね。読了後にはきっと、粒立ったほかほかの炊きたてご飯が食べたくなることでしょう。
是非ご一読ください。
都会で働いていた主人公は、セクハラを受けながら働いていた。そんな中、母から父が倒れたと電話があり、故郷に帰ることに。主人公の家は米農家。主人公は会社を辞め、米作りに奔走する。知識も経験もない中、両親や幼馴染に教えてもらいながら、懸命に米を作る。
ただ食べていたお米。毎日当たり前のように食べていたお米。それがこんなにも多くの人々が関り、人間関係を作り、時間と手間をかけて、苦労の末にできていた。これだけでも、お米の大切さ、主食の有難さが分かる。
その上、この作品には田舎ならではのことが織り込まれていたり、恋愛や結婚など、お米作りを通して生活を見ていたり、人の営みも感じられる。また、主人公の成長物語でもあり、米農家に生まれながら何も知らないし、経験もないために、筋肉痛や日焼けに悩まされるなど、女性視点も忘れていない。
改めて、「食べる」という日常が大切だと思える作品。
是非、御一読下さい。