ウィンドミル

@ktkmba1006

第1話

息詰まる投手戦日本は最終回一点差でアメリカをツウアウトツウストライクまで追い込んだ


『後一球、後一球』


スタジアムは日本の、あと一球コールに包まれていた。


ポニーテールの華奢な体の顔が整っているピッチャーの日野はそのコールのなかボールを握り力まずに振りかぶった。


キレイなフォームから放たれたボールはぐんぐんと下から上に伸び上がった


『ピッチャー振りかぶって投げた三振~ゲームセット日本優勝!!』


『やりました日本、東京オリンピック金メダル~』


このソフトボール日本代表の勇姿を小学二年生の立川昭子と八王子由実はテレビにかじりついて見ていた。


昭子は興奮しながら


『凄い、由実最後の球見た!すごく伸び上がってたよね』


『見た見た、凄いよあの球しかしキャッチャーもよく簡単に捕るよね』


昭子はその場に立ち上がって


『私、日野投手に憧れた。私もあの球を投げれるようになりたい』


『昭子なら今から練習すれば投げれるようになるよ』


昭子は真剣な目で由実を見て


『ねぇ由実、私のキャッチャーになってよ』


『無理だよ、私にあんな凄い球捕れるわけないよ』


昭子は笑いながら


『バカね、いきなりあんな凄い球投げられる訳じゃないし』


『あっそりゃそうだよね』


昭子は由実の両肩に手をのせて


『一緒に練習して日本一のピッチャーとキャッチャーになろう』


由実は満面の笑みで


『うん』


二人は物置にあったグローブを取り出して公園に向かった。


『由実、ちゃんと押さえて』


『押さえたよ』


『この辺かな』


昭子は13.11メートルのところに足で土を削るようにして目印をつけた。


『準備はいい?』


由実は大きく手を広げて


『OK投げていいよ~』


昭子は大きく振りかぶって大きな声で


『日本一のピッチャー誕生の最初の一球いきまーす』


日野投手の投球を見よう見まねで投げた昭子の球はゴロゴロと由実に向かって転がっていった。


昭子は転がったボールをグローブに当てて前にはじいている由実を見て


えっ何で何で届かないの?嘘でしょ日野投手はあんな簡単に投げてたじゃん


今のはきっと手が滑ったんだ今のはなしなし


由実は前にはじいたボールを昭子に投げたがボールは思いっきり違う方向に飛んでいった。


『あっごめん』


『いいよ、いいよ』


それた方向に転々としているボールを昭子は追いかけていった。


昭子はボールを拾い上げ


『次こそはちゃんといくよ~』


昭子は再び目印の場所に立ち


さっきのは手が滑っただけ次こそはちゃんといく


昭子は自分に言い聞かせて思いっきり腕をふった。


今度はボールは思いっきり由実の頭の上を越えていった。


由実は頭の上を越えていったボールを拾いに行き昭子に投げ返したがまた変な方向にボールはそれていった。


この後もお互いに一球投げるたんびに暴投して二人はボール拾いにヘトヘトになっていた。


『昭子これいつまで続けるの?』


『もうやめよっか私には才能ないみたいだし』


『なんだもうやめるのか』


いきなりの声に二人は声がした方角に振り向いた。


そこにはスラッとした髪の短い20代くらいの女の人がたっていた。


昭子はキョトンとした顔で


『えっ、誰ですかあなたは?』


『通りすがりの元ソフトボール部出身の女よ』


『それならソフトボール教えて下さい』


『あらやめるんじゃなかったの?』


昭子は少し間をあけながら


『いやでも』


『冗談よちょっと意地悪しただけよ教えてあげる』


元ソフトボール部出身の女は昭子と由実のところに歩いてきて昭子が手に持ってたボールを取り上げた。


『このボールはまだあなた達には大きいそれと基礎もできてないのにいきなりピッチング練習をしたってダメだわ、まずは基礎から始めなきゃ』


二人は声を揃えて


『基礎?』


『そう、まずはキャッチボールから始めましょ』


元ソフトボール部出身の女は二人を少し離れたところに立たせた。


『いい?キャッチボールってのは相手のことを考えて相手の捕りやすいところに投げる最初はそれだけを意識してやってごらん』


二人は声を揃えて


『はい』


二人はその日一日中キャッチボールを教わった。


それから二人は毎日元ソフトボール部出身の女に教わるようになって四年後二人は中学生になった。


二人は掲示板に貼られているクラス発表の紙を見て


『私A組由実は?』


『私もA組』


『やったねぇ』


二人は抱き合った。


二人は楽しそうに話ながら教室に向かった。


教室は浮かれた新入生達がガヤガヤしていた


そこへがらがらと音を立てて


背の低いスーツを来た女の先生が入ってきた。


『みんな今日から一年A組の担任になりました、三鷹さつきですあなた達と同じ先生一年目なのでよろしくお願いします』


クラスのみんな拍手した。


担任の三鷹は元気な声で


『じゃあみんなも一人一人自己紹介と自分が将来成りたいものを言ってって』


席の前から順に自己紹介がおこなわれていき昭子の番になった。


『立川昭子です、私は将来日本一のソフトボールのピッチャーになろうと思っています。よろしくお願いします』


みんなが拍手するなか一人の男が


『ソフトボールのピッチャーなんかになってどうすんだよ』


昭子は男を鋭く睨み付けて


『何、何か文句あるの?』


三鷹はあたふたしながら


『ちょっと二人ともやめなさい』


二人は三鷹の言うことを聞かずに


『別に、あんな競技頑張ったところで意味ないのにと思っただけ』


昭子はキレそうになっている自分の感情を抑えて


『ソフトボールにだって魅力があるんだよ』


『しょせん野球のパクリだろソフトなんか野球に比べればレベル低いんだから』


『そこまで言うならあなた私のボール打ってみなさいよ』


『お前面白いこと言うな』


クラスの何人かの男達が笑った。


男の一人が


『おい、やめた方がいいぜこの方は強豪シニアからスカウト受けてる凄い人なんだぜ』


『あら、そうなのならなおさらやりがいがあるわね』


男は昭子を睨み付けながら


『だいぶ強気な女だな』


昭子は男をしっかり睨み付けながら


『放課後グランドでね』


そういって昭子は先生にお騒がせしてすみませんでしたと謝って椅子に座った。




そして放課後約束通り昭子は男と一打席勝負をすることになった。


その勝負を見ようとクラスメートがたくさん集まっていた。


昭子はゆっくりとマウンドに向かい足場を足でならした。


男も左バッターボックスに入り足場をならす。


昭子は由実が構えるキャッチャーミットにゆっくりと目線をやった。


昭子は振りかぶって一球目を投げた。


男は昭子の球を見て


遅いこんな球楽勝に打てるわ


男は球の起動に合わせ思いっきり振り抜いたが昭子の球は鋭く落ちた。


男は落ちるボールなんて想像もしてなかったから思いっきり空振りをした。


男は自分が空振りしたことにイラッとした。


こざかしい真似しやがって。


由実はニコニコしながら


『ナイスピー昭子』


周りで見ていたクラスメートが


『おいおい、大丈夫かよ』


『大口叩いてたけどこれで負けたらチョーダさぁ』


次々と飛び交うヤジに男は反応せずさっきまでとは違い真剣な表情になった。


昭子は気を引き締めて2球目を投げた。


さっきの球より早いなでもこのスピードなら打てる。


カキーン


打球は大きく飛距離を伸ばしたが切れていきファールになった。


あっぶなさすが男子よく飛ばすは


昭子は一瞬肝を冷した。


くっそきれたかでももう見切った。次で必ず仕留めてやる。


この球でとどめ刺してやりな。


由実はニコニコしながら三球目のサインを出した。


昭子はそれにうなずいた。


昭子は振りかぶった。


そして思いっきり腕をふった。


おっさっきより早いでも打てる男はバットをボールの軌道合わせて振り抜いたがボールは伸び上がっていきバットの上を通過し由実のキャッチャーミットにバッシンとおさまった。


男は思いっきり空振りバッターボックスにしりもちをついた。


なんなんだ今の球は。


見ていたクラスメート達も口をあんぐりと開けていた。


昭子はみんなの驚きの問に答えるように


『今のはライズボールソフトボールピッチャーしか投げれない球』


昭子はバッターボックスに座り込んでる男に手をさしのべ


『野球も最高のスポーツだけどソフトボールも最高のスポーツなんだよ』


男は震えた声で


『そうだね』


昭子はニコッと笑って


『次ソフトボールをバカにしたらただじゃおかないからね』


『はっはい』


『由実いくよ』


『うん行こっかソフトボール部入部しに』


二人は部室のある方角に歩き出していった。


このバッテリーが将来ソフトボール界を騒がせることになるのであった。


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