第18話 エピローグ・お終いの日々を君と


そのイメージは突然浮かんだ。間木は頭を抱え膝をつく。

「マーギ!どこか痛むの?」


窓辺で歌っていたローレイラが慌てて飛び降り、尾を引きずって近寄る。間木の肩が小刻みに揺れている。発作か何かかと焦るが、すぐに人騒がせな誤解と気づいた。


「……なに笑ってるの。焦ったじゃない」


「ご、ごめん……ちょっとあの三人がね……」


間木は番に詫び、額に口づけてやった。まだ叱り足りないローレイラだが、こうされると強くいえない。


「マーギ、こんなこと他にはしないでよ。本当に人誑しなんだから」


「しないしない。君だけさ」


大体、皺くちゃで痩せ細った爺を愛し続けてくれるのは情の濃いローレイラだけだ。わかっている。


「あの食えないエルフさんも、早く素直になれればいいんだけど」


「なんの話?」


「いや。予見してね。もう会えない友達に、もうすぐ恋人か番が出来るらしいよ」


状況はよくわからなかったが、如月雲雀は元の姿だった。そして隣には。


「ふうん……」


ローレイラは気のない返事を返し、間木に翼と髪で絡みついた。


「あなたは自分の番をもっと見るべきだと思うけど?」


海に濡れた唇が弧を描く。間木ことローレイラの番は誘われるまま口付けた。

波の音が笑いさざめき、船を導くセイレーンたちの歌が微かに聞こえる。

陸と海の狭間で睦み合う番を祝福するように。


おしまい

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百花綺譚 花房いちご(ハナブサ) @hanabusaikkon

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