第4話
マスコミ対策ということで俺はずっとこの建物にこもり切りだ。
日に日に外に出たいと思い始め、虚しさが募る。
そんな俺のほぼ唯一と言っていい楽しみがあった。
2日に一回くらいに広瀬さんが訪問してくることだ。
今朝彼女に「学校に行ってみない?」と勧められ、制服を渡された。
久しぶりの外出許可ということもあり、ウキウキして施設の建物の外に出ると、そこには外から中が見えないようになっている車があった。
「まさかこれで行くんじゃないですよね」
恐る恐る広瀬さんに尋ねると上にこの車で行くという条件で外出が許可されたと言われた。
おいおい、まじかよ。
仕方なく車に乗り込み、門を出る。
学校の門の前についた俺は広瀬さんに別れを告げ、ドライバーに感謝を述べると担任と学年主任に校舎内へと引き摺られていった。
教室に着くとザッと教室内にいる生徒全員の目が俺に集まる。
約30組の目線の中から目当の2人を探そうとしていると、後ろから、ワッという声とともに押された。
俺の親友の綾芽と智明がいたずらをしている時の子供っぽい笑顔で立っていた。
「やっときたな白泉!結構まじでくだらねえ話できるやついなくて孤独死する一歩手前だったんだぞ。はんせーしろ」
「悪かったって智明。大変だったんだ」
智明は何かニヤァとして
「しかも綾芽なんか大号泣してたしなぁ。」
してないしという声が綾芽の方からして俺たち男組は爆笑した。
教室はいつもワイワイしてるのに今日はなんだか緊張感がある。
やはり例の公式発表のせいだろうか。
机の方まで行くと、智明がノートの束を俺のこと机の上に放り投げてきた。
「ほれお前がいなかった分のノートかしとくから写せよ」
智明の好意に感謝しながら写し始める。
「分からないことがあったら聞いていいぞ」
いつにも増してニヤニヤしている。
「何ニヤニヤしてんだよ」
「いやー真面目くんの白泉についに勉強教える時が来るのかーと思ってな」
そういうことか。それなら。
「綾芽。ここ教えて」
智明は裏切られたみたいな顔をして突っ立っていた。
俺はモノを書くのが結構好きな方で小学生から中学生くらいまでは毎日日記をつけているような人間だったから別に字を書くスピードが遅いわけではないはずだが。
全く終わる気配がしない。
進度速すぎだろ.....
久々の授業を乗り切りつつ休み時間にはノートを全力で写す。
いつもより疲れる....
それでも少し放課後居残ってノートを写し終わり、智明に返す。
「分からないことがあったら聞けよ」
「ああ綾芽にな」
俺たち三人組はけたけた笑いながら下駄箱エリア近くまで行くとそこには制服に身を包んだ百合さんが立っていた。
「やあ三河くん。そちらは友達?」
彼女の視線から紹介しろという圧が感じられたため、
「こっちが友達の綾芽と....」
「白泉くんの幼なじみの智明っす」
俺が言い終わる前に自己紹介しやがった。
「白泉の幼なじみの綾芽です。よろしくお願いします」と綾芽が手を伸ばし、握手をしていた。
「仕事どうしたんですか百合さん」
てへへと笑って
「君が久しぶりに学校に行くことになったから送り迎えくらいしなきゃと思って先輩に仕事押し付けちゃった」
ヒューモテモテだねぇ白泉ぃと智明が耳打ちしてくる。
百合さんがまた朝と同じ車の前まで連れてきてくれる。
「三河よかったじゃんセレブみたい」
語尾に絶対にwか(笑)がついてそうな口調で綾芽が言う。
「いや、セレブというか逮捕された被告人って感じ?」
智明まで変なこと言ってくる。
こうして俺の久しぶりの登校は幕を閉じた。
崩壊都市 やっくぅ @yakyaksamma
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。崩壊都市の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます