第2話 少年とのつきあい
お父さんの話では、その少年は私と同じぐらいの、小学4~5年だったそうです。
お母さんに会えるのがうれしかったのか、少年はタクシーの中ではしゃいでいたそうです。
伊香保温泉に着くと、少年から聞いた旅館を観光案内所で尋ね、旅館の前で少年を降ろしたそうです。
間もなく、少年のお母さんがやって来て、お父さんに何度も礼を言ったそうです。
少年のお母さんは、着物が似合う、キレイな人だったそうです。
「――ちゃんと話できたか?」
「できるわけないじゃないか、ちょっとしか会えなかったんだから……」
「……で、また会えるって?」
「プライバシーをシンガイするなよ」
「ッ……」
「……お父さんのキョカがなきゃ来ちゃダメだってさぁ」
「……か。ま、お母さんの立場もあるからな」
「……グスッ」
「……おじさんにも、キミぐらいの娘がいる。良かったら友だちになってくれないか?」
「顔によるなぁ」
「ッ、可愛くねぇ」
「……ぼくんチ、ここの403号室。じゃあね。あ、そうだ。これ、母さんから預かった。……それと、……おじさん、ありがとう。バイバイ」
マンションの前で降りた少年は、白い封筒をお父さんに渡すと、そう言って走って行ったそうです。
それには、
《この度のご親切を感謝いたします。
事情があって、息子と一緒に暮らす事ができませんが、お金を貯めたら、息子を引き取るつもりでいます。
見ず知らずのあなた様に、このようなお話を申し訳ございません。
あなた様のご親切は一生忘れません。ありがとうございました。
少しばかりですが、受け取って下さい》
と書いてあり、何枚かの一万円札が入っていたそうです。
もう、輝郎くんは嫌いです。最初はおとなしかったけど、なれると、口は悪いし、いじわるだし。
お父さんがよけいなことして、友だちになったのを後悔しています。
えっ? 輝郎くんですか? あの、お父さんのタクシーに乗って、伊香保に行った少年です。
いまでは、家族ぐるみでつきあっています。
輝郎くんのお父さんもいい人で、お父さんのタクシーをときどき利用してくれるそうです。
輝郎くんがもう少ししんし的だったら言うことないのに……。
「あっ、それ、返してよー!」
「ヤだびょ~ん」
「テルオのバカー!」
いつも、こんな調子です。
嫌いだけど、でも、なんだか会いたくなる存在です。
そんな、輝郎くんのお父さんとお母さんか仲直りして、いつの日か、また3人で暮らせるようになったらいいなって思います。
近況報告。最近、輝郎くんが少しやさしくなったので、ちょっとうれしいです。
おわりです。
どちらまで? 紫 李鳥 @shiritori
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