ゆるくはないけど優しい。重いけれども柔らかい。

前もって断っておくと、本作はソロキャンプがメインの作品ではありません。主人公である男装女子マナはフィールドワークや旅行で多くの場所に行きますが、多くの気の良い友人や恋人、あるいはその家族に囲まれています。

しかしメインタイトルからの逸脱……それは同時にそれだけキャラクターが自分の意識を持って作品を生きて、自分たちの物語を紡いでいっている証左だと思います。

と言っても、本作を優れたストーリーたらしめているのは、やはり作者様の文章力やセンスに依るところも大きいです。
女性であることは捨てずとも、辛い過去によって男装という十字架を負ったマナの、キャンパスライフと不思議な出来事をともに歩んでいく本作は、時に情感豊かなタッチで、時にシビアに、そして時に美味しそうな料理を提供してくれる本作は、ただそれだけで楽しいと思わせてくれます。

LGBT問題、いくもの数、種類の別れ、自殺の問題などに彼女が直面しますが、時に前向きに、時にコミカルに描かれるそれらは、重たくなりすぎずストレスを感じることなく受け入れることが出来ます。

読めば物の見方や価値観が変わる。そんな力と温かみを持った良作です。

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