第21話 一番風呂問題

【父、定年前】


風呂掃除が終わった。お湯も良い加減に沸いた。

私はバスマットを替えるのも忘れなかった。ではでは入浴……。


〈ガララッ〉(玄関の引き戸が開く音)


「ただいま……お、おおっ!?」

浴室の灯りがついているのを見て猛烈な勢いで駆け出す父。


〈ガララッ〉(脱衣所の引き戸が開かれる音)


私の前で服を脱ぎだす父。いや私、シャツのボタン三つぐらい外してたんですけど。しかし父のヌードなど見たくないので脱衣所から退散した。


汗を流して晴れ晴れとした顔の父が言った。


「いやぁ~良かった間に合って!」



全 然 間 に 合 っ て な い よ 。






【父、定年後】


私「お風呂沸いたけど、ちょっと忙しいんで先に入ってください」

父「いや、俺は後でいい」

私「でも私、明日の仕事の準備が終わらないんで……」

父「いいって! 気を遣うなよ!」


「ヒートショック」が怖いらしい。

そして自分の入浴中は脱衣所と浴室の戸を薄く開けている。万一の場合、早めに見つけてほしいのだろう。



生おしり見ちゃったんですけどどうしてくれる。

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父と暮らせば。 宮間 @congelazione

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