第20話 鯖飯生中継

別なエピソードを少しまとめてから更新するつもりでおりました。

しかし、つい先ほど緊急事態が発生しました――。


「昼間のテレビで鯖缶を使った炊き込みご飯の作り方をやっててな、なかなか簡単だったな」

「へぇー」

「俺、作ってみようと思うんだ。ま、自己流だけどな」

「……ほぉー(最後の一文が気になるけど)」


夜の台所、何やらゴソゴソしている父。炊飯器のタイマーを入れた音がした。


「明日の朝は鯖ご飯だ! ま、俺あっさりした味がいいからな」

「はぁ」

「シンプルに鯖缶を入れてだな」

「ほうほう」

「あとごま油」

「ほぉー」

「さらにオリーブオイル」

「へえ……え(何故油にこだわる)」

「生臭みを取るために“わさび醤油”(商品名)を入れて」

「……(『シンプル』『あっさり』がどこかで消えたぞ)」

「ああ、あとそれから」

「(そろそろ聞きたくない)」



料理レシピを読むと、基本形はホントにシンプルに「鯖缶+生姜」の鯖ご飯。別に極端に奇抜なものは入れてないみたいだけど、明日の朝に何が出来上がるか不安なまま夜は更けていく……。



(追記)

朝、炊飯器のフタを開けると、そこは

「ポロッポロでちょっと生っぽい茶色いごはん」

であった――。


たぶん鯖缶とわさび醤油の塩分も関係したんだろうけど、やっぱり油分が多すぎて米が水分を吸ってくれなかったのでは。


「バターも入れたかったが、見当たらなかったのでマヨネーズを入れた」


ちょっと何言ってるかわからない。

あと、わさび醤油(台所のどこにあったんだ)の“わさび感”、意外に舌に足跡を残していく。


「くそぉ、失敗だぁッ!」

「あ、いや食べられないって程ではないよ(加熱しなおしたら生っぽさは消えた)。何もそんなに落ち込まなくても」

「落ち込んでない! 俺は前向きだ! この経験をもとに研究を重ねる!!」


……重ねるのか……。

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