第3話 アイドルのセンパイ
「わ、わわわ、私達でユニットを組んで…その上ライブってどういうことですかっ!?」
「落ち着け。ライブと言っても大きなステージではないぞ」
あわあわと慌てているもなかに声田トレーナーが丁重に説明する。
「この778プロダクションには小さなステージがある。そこで、新人アイドルであるお前達三人で構成されたユニット“New Legends‼”が初ライブをする。客はお前達三人が呼ぶんだ。これからかなりハードになるが、気合入れて頑張ることだ」
「New Legends‼……」
「私達のユニット名ですか!?わぁ…!素敵です!かっこいいです!…でも、そっかぁ…、かなり忙しくなりそうですね…」
「いーじゃんいーじゃん♪ハードだからこそやりがいを感じられるしさっ☆ん〜っ、燃えて来た〜っ!!!」
凜音ともなかは少し不安そうだが、光莉は楽しみそうな様子だった。
「精一杯プロデュースするから、三人も頑張って」
「プロデューサーさん…!はいっ!初瀬川もなか、頑張っちゃいますよ〜っ!!」
「あ、そうだ」
プロデューサーからのフォローを受けて気合を入れているもなかに、声田トレーナーが何か思いついたように声を出した。
「778プロダクションには下積みを長年続けてきた先輩アイドルが一人いるんだが、彼女に分からないことを聞いてみると良いんじゃないか?」
「あぁ、彼女ですか」
プロデューサーは声田さんが誰のことを指しているのか分かっているようだ。
もなかと光莉は頭にたくさんのはてなを浮かべているが、それに気づいた凜音が気を利かせて真っ先に質問する。
「あ、えっと…どんな方なんですか?」
「天使ゆみみっていう、大人でとても努力家なアイドルだよ」
凜音の質問にプロデューサーが真っ先に答えた。
「大人か…」
人見知りをする凜音にとっては、大人の女性と会話をするのは少し不安なのかも知れない。
「大丈夫。とてもフレンドリーで話しやすい人だから」
不安そうに呟いた凜音にプロデューサーは優しくフォローを入れた。
「その"天使ゆみみ"って人はどこにいるの〜?今日来てるカンジ?」
「ああ、来ているよ。お前達の前があいつのレッスンだったからな。休憩室で休憩でもしているんじゃないか?」
「行ってみる?」
「えっ!いいんですかっ!?是非会いたいですっ!」
プロデューサーの提案にもなかは喜んで乗った。凜音と光莉も乗り気のようだ。
「おい、レッスンはどうする?」
「あっ!そっか、レッスンだったんだ〜!」
「忘れていたのか蜜久…。……はあ、仕方がない。今日だけだぞ」
「え…?」
声田トレーナーの予想外の言葉にもなかと凜音は困惑した。
すると声田トレーナーはプロデューサーに目で何かを訴えたあとに三人に背を向け、
「30分で戻ってこい、いいな?」
という言葉を放ってレッスンルームに入って行った。すると光莉が小声で何か呟いたが、もなかや凜音には聞こえなかったようだ。
「…行こうか」
プロデューサーの誘導と共に、もなか達は休憩室へと向かっていった。
【休憩室】
「やっべー…早速筋肉痛かよ。んー、湿布湿布……。………はぁ、もっと鍛えないとなぁ。最近は肌の調子も悪くなってきてるし…こんなんじゃ到底16歳にはなれないよ」
天使ゆみみは一人ぶつぶつと独り言を言いながら筋肉痛のする所に湿布を貼っていた。
「はは、こんな姿後輩達には見せられないな〜…。ちゃんと隠しとかないと…。………うん。頑張れ、ゆみみ!」
湿布を貼り終わり、そう自分で自分を元気づけていると、コンコン、と誰かがドアをノックする音が、天使ゆみみたった一人しかいない寂しげな部屋に響いた。
ゆみみはそれに驚いたのか、「うわあっ!?」という悲鳴をあげた後に少し呼吸をして、「はっ、はい!」と改めて返事をした。
ドアが開くと、その先には見覚えのないアイドルとプロデューサーが立っていた。するとゆみみは立ち上がってもなか達へ駆け寄った。
「やっほ〜プロデューサー♡お疲れ様ぁ。この子達は?どしたの?」
「は、はじめまして!新しくこの事務所のアイドルになりました、初瀬川もなかと申します!よっ、よろしくお願いします!」
もなかがとても緊張した様子でゆみみに頭を下げて挨拶をした。もなかに続いて凜音と光莉も挨拶をした。するとゆみみは慌てて
「そんなに改まらなくていいんだよ!?ほ、ほら〜、ゆみみ達多分そんなに歳変わんないしさ…☆」
「え…?ゆみみさんって大人じゃないんですか?」
「ブッ!?な、なにそれ〜どこ情報ぉ〜?」
「プロデューサーから聞いたんですけど…」
凜音がそう言った途端にゆみみから笑顔がすっと消え、ゆみみがプロデューサーに近付いて
「…おい、プロデューサー。あとでお仕置きだからな☆」
と言った。もなか達三人には意味が理解できていないようで顔を見合わせていた。
「ん、それでそれで?ゆみみに何か用?」
「あ、あの!さっきトレーナーの声田さんからゆみみさんが先輩アイドルだという事を聞いて、ゆみみさんにアイドルについて聞きに来ました!!」
「ふーん、そなんだ。分かった分かった、何でも教えちゃうぞ♡ささ、中入って!」
ゆみみが中へ入るよう誘導し、プロデューサーともなか達を椅子に座らせた。
プロデューサーがゆみみの隣に座り、もなか達3人が向かい合わせに座った。
「どっこいしょっと…。ふふっ、何から聞きたい〜?」
「どっこいしょって!!笑 ゆみみんおば…っ」
「光莉、それ以上はいけない」
光莉がゆみみの地雷を踏みそうになると、凜音が急いで光莉の口を抑え黙らせた。
ゆみみの笑顔が少し引きつっているが、誰もそれには触れようとしなかった。
「あ!私、どうしてゆみみさんがアイドルを目指したのかが知りたいです!」
「確かに…私も気になる、かな」
「ゆみみがアイドルを目指した理由、かぁ…。プロデューサーには泣きながら話したよね。…………うん。分かった、話すよ。」
ずっと笑顔を保っていたゆみみが、途端に真剣な顔に変化した。
【プリスタ】メインストーリー @primas_1
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。【プリスタ】メインストーリーの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます