いつからか人間じゃなくなってました

まか

第1話

「俺だけが生きてていいのだろうか」

そう何度も思った。

みんな死んでいくなかで俺だけ奇跡的に生還、なんてつまらない。

みんなで一緒に生きてこそ意味があるというのに。


「こんな国、さっさと滅べばいいのに」


そう言いながら、俺はベッドに入った。

民のいない国を守ったところで、なにがいいんだか俺にはわからない。

お偉いさん達は何を考えているのかなんて俺の想像の範囲外だったりするんだろうなあ。

この国が無くなればそれに気づくのだろうか。


──そういえば、俺の住んでた村に伝説みたいなのがあったような気がする。

確か...


【世界地図の一番南にある洞窟には、悪魔が住んでいる】


だったっけか。

くだらねえ。いるわけねえじゃん。そんな空想上の生物。

でも、もしいたら...その力を手にすることは出来るのだろうか。

悪魔との取引によって、何かを失わなくてはならないのだとしても、俺に失うものなんかない。


試してみる価値はある。


そう思い、立ち上がり出かける準備をした。

正確には、この世からいなくなる準備なのだろうが。

持ってくもんは...アロンダイトだけでいいか。

俺の取り柄といえば剣術だ。この国一の剣士を決める大会で3年連続優勝をしている。

それなのになぜ戦争に参加してないのかというと。


くだらない。


その一言に尽きる。

アロンダイトは伝説の剣らしいが...興味ねえや。

使う人間によって希望にも絶望にもなる武器...それが剣だ。

俺は希望になるように使いたい。

戦争みたいに絶望を与えるような剣の使い方は絶対にしたくねえ。

「──っと、そろそろ出かけねえとな。」

俺は、ただひたすら南に向かった。

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