二十七

「ちょっと待った」

「待ったなしだ」

 穏やかな午後。

 縁側では、黒鬼と将棋をさす朔羅の姿があった。

「朔羅様」

「何だ、今忙しい」

「その、お話が——」

「勝負事だ。後にしてくれ」

「でも、また浅葱浜で人が消えたと——」

「銀。そういう話なら、桔梗に言ってくれ。月影の当主だからな」

 一周され、銀は項垂れた。

「俺は興味があるぞ。お前との勝負より、面白そうだ」

「言うねぇ。ま、桔梗でもどうにもならなければ嫌でも話が降ってくるんだ。それまではっと、これでどうだ」

「甘い」

「はぁ……朔羅様」

 銀の心配を他所に、駒を勢いよく進める音が響いた。


 

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水鏡月 seise @seise

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