後書き

― 西暦2020年2月3日


― 南部テリオー領とはうって変わって極寒のアイマー領




 「愛は囁かずとも炎は燃え尽きぬ 王国物語スピンオフ4」を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


 更に応援、フォロー、レビュー、コメント下さった方々、感謝の気持ちでいっぱいです。ご意見ご感想、真摯に受け止めております。皆さまの評価、反応がとても励みになります。


 この物語はソンルグレ家の長男ナタニエルの話でした。実は三兄妹の話で思い付いたのは次女マルゲリットの「忍び愛づる姫君」が一番最初でした。その後、妹の話があるのなら姉の話もという思いから「色豪騎士の負け試合」を書き、一番最初に公開しました。


 妹二人のが幸せになったし、小さい頃から色々苦労した長男ナタニエル君にも生涯の伴侶を見つけて欲しいという思いが段々大きくなってきたのが「忍び」の公開中でした。


 ですからぼんやりとナタニエル君の話も考え始めたのです。アントワーヌ君と継子ナタニエル君の絆の強さも本編第四作「開かぬ蕾に積もる雪」からあれだけ強調してきた私です。ナタニエル君の幸せをアントワーヌ君は人一倍喜んでくれるだろうと思うと、やはり彼の話も書かなくてはという義務感に駆られました。


 妹二人のお相手はすぐに思い付いてイメージが湧きましたが、お兄ちゃんのお相手は……実は結構悩みました。身分違いものも結構書いたし、やはり無難に貴族かな、それでも一作の話になるくらいのストーリーが必要だし……シリーズ作も作品が増えてしまって、段々ネタ切れになってくるのですよね。


 そして難産の末に生まれたのが魔法がちょっと使える伯爵令嬢エマニュエル・テリオーでした。一旦彼女の像と再会ものという大筋が出来上がると、ガストンやパスカルという脇役にも支えられ、話は簡単に組み立てられました。


 その時点で既に公開済みの作品、本編第四作「開かぬ蕾に積もる雪」でも他のスピンオフでもナタニエル君の恋バナには全く触れていませんでした。というのも、元々は彼の話を書く予定は作者の頭の中にはなかったからなのです。しかしこの作品「愛は囁かずとも炎は燃え尽きぬ」は執筆するにあたって、既に公開済みの他作品と辻褄が合うようにするのは特に苦ではありませんでした。


 ただ、ダンジュがテリオー領にエマを見張りに行く時期に「忍び」の話の方では重要イベントが起こっていなかったので丁度良かったです。マルゲリットがダンジュにしばらく会えなくて寂しい思いをしただけでした。そして「忍び」でマルゲリットが学院を卒業した日にエマは初登場を飾りました。これがナタニエル君衝撃の熱愛発覚の経緯です。当時は少々お騒がせ致しました。


 物語の骨組みは出来て、さあ執筆ということになり時系列的に順に書いていくのではなく、今回は少し過去と現在を行ったり来たりする構成にしてみました。二人が学生時代に別れた理由をもったいぶって小出しにしてみたかったのです。そのお陰でキューピッド役のガストン君が実はそこまで悪い奴じゃないアピールも最初に出来ました。まあ所詮はガストンですからどうでもいいと言えばいいのですが……


 さて、物語はほぼエマ視点で進めましたが、ナタニエル視点も入れたかった私です。番外編にするには少し長くなり過ぎたので結局は途中に挟みました。エマ視点からでは見られないナタニエル君の異常なまでの必死さをお伝えしたかったのです。


 爽やかで紳士だったはずのナタニエル君、実はなかなかの粘着質な肉食で、ジェレミー伯父の血も濃く引いているようですし、時々崩壊もしています。そして意外なことに、現在公開済みのシリーズ作品中一番のお行儀の悪い男性主人公という不名誉な地位を確立してしまいました!


 王国シリーズ歴代ヒーローの中で最初からお行儀が悪い方々でも皆さん式を挙げるまで辛抱強く待っていました。あのリュックやティエリーさんでも我慢して、式の前はいわゆる第一章止まりでしたよね。


 あのマキシムに至ってはアントワーヌ君にごっつい釘をさされてすっかり心を入れ替えて?式までは軽い抱擁とキスだけでした。しかも待ちに待った初夜も当日には実行に移せずにいたような気が……


 唯一の例外はアントワーヌ君ですが、お相手は再婚だったし、彼女を救うためにずっと辛抱していました。それに厄介な小舅ジェレミーのお許しも出ていました。ですから彼はお行儀良いヒーローの部類に入っています。




 私はシリーズ作でも時々は各話に凝った題名を付けて、その題名を選ぶだけにかなりの時間を費やすことも多いです。今回は流石に力尽きていたので最初は二、三文字の短い題名にしていました。それでも何だか味気ないと思い始め、初めての試みで各話の題名を台詞の抜粋にしました。これは簡単でしたし、話の内容に合うようにどの台詞を選ぶかという楽しみまでありました。


 そう言えば親世代のシリーズ本編では黒の君、青の君、白の君がいましたね。順番にクロード、アントワーヌ、リュックです。子世代では誰が相当するでしょうか? 魔術師黒の君はナタニエル、文官青の君はティエリー、近衛騎士白の君はマキシムで決まりですね。


 シリーズ作でも数々のキューピッド役が居ました。決して可愛い天使のような人物とは限らず、大部分はむしろ反対のような……今少し思い出してみました。第一作『世界』では騎士道大会で魔術を使って反則負けした騎士、第二作『貴方の隣』ではリュックの番犬ランス、スピンオフ『王子と私』では赤い狐と緑の狸、『色豪騎士』ではナタニエル君と問題のBL本、『溺愛』ではロクデナシの護衛ジョゼ、『忍び』ではマルゲリットを荷馬車できそうになった御者でしょうか。


 今作では特にガストンのキューピッドぶりが顕著でした。彼も例に漏れず多数派の可愛くない方です。遠征直前に命を授かった赤ちゃんダニエルは歴代作の中で一番可愛らしいキューピッドということになりますね。


 この作品のテーマは炎でした。まず、エマの髪が炎のような赤毛です。主人公二人が出会った時はエマの魔法でガストンが火だるまになり、求婚の時はナタニエル君が花火に仕掛けをし、結婚式では今度はエマが蝋燭ろうそくを使って素敵な演出をしました。二人の愛の炎はいつまでも燃え続けることでしょう。


 シリーズ作のスピンオフが進む度にぐだぐだと長くなってしまう後書きです。作者の思いがより積もってきて、どうでもいいこだわりをあちこちにちりばめているからですね。毎回お付き合いありがとうございます。


 さて、次回連載も懲りずに王国シリーズです。主人公はこの作品にも少し登場していたあの方です。一週間ほど休ませていただいて公開を始めようと思っております。続けて読んで下さると幸いです。




           合間 妹子

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愛は囁かずとも炎は燃え尽きぬ 王国物語スピンオフ4 合間 妹子 @oyoyo45

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