第3話 ヘルメットについて
ヘルメット――人体の中で最も重要な頭を守る防具の事だ。国内外に数多くのヘルメットメーカーは存在するものの、日本にある『アライ』と『ショウエイ』だけは別格と言える性能を誇る、優れたヘルメットメーカーだ。多くのレーサーがこの二大メーカーのヘルメットを着用していることから、その優秀さは誰の目にも明らかだろう。
アライとショウエイ。この二つのメーカー、性能はどちらも優れているが、やはり別の会社だけあってそれぞれに特色がある。
ざっくりと言ってしまえば、アライはデザインを犠牲にして安全面を優先。ショウエイはその逆で、安全面を犠牲にしてデザインを優先と言った感じか。アライのヘルメットには凹凸が少なく、のっぺりとした印象がある。安全面を考えた場合、何かにぶつかった時それが衝撃を逃がすのに効果的なんだろうと予想はするが、長距離ツーリングをした場合、空力などの面で疲れがたまるのは否定出来ないだろう。
凹凸が少ないだけあって例えば白一色など単一カラーの場合、遠目から見ればアメリカ版パッケージのボンバーマンを想起させるが、カラーリング自体は派手なものが多いので、色選びさえ間違えなければ気になるほどでもないだろう。
逆にショウエイのヘルメットは空力やデザインに力を入れているため、長距離や高速走行時はとても楽だ。正面から浴びる風も少し頭を傾けてやれば難なく後ろに流れてくれるので、疲労のたまり具合が全然違う。しかしその分凹凸が多いのでアライほどの安全性は望めないだろう。と言ってもそこは国内どころか世界でも最高峰のメーカーだけあって、下手なヘルメットメーカーなど足下にも及ばない安全性は確保されている。ここで言う安全性が劣るというのは、あくまでもアライに比べてと言う意味だ。
これらに一段劣るものの、その後を猛追しているのが『カブト』と言う国内メーカーだ。もともと自転車のヘルメットを作っていた会社のようだが、近年はバイク用のヘルメットメーカーとして名を上げてきている。この会社のヘルメット、デザインはショウエイのように優れていて、色合いはアライのように派手だ。一見両社のいいとこ取りをしているように思うが、その分安全面では劣るし、細部への作り込みも甘い。その分値段がアライとショウエイより一、二万安いので、お手頃価格なのは魅力だろう。
何が何でも頭を守りたい人や、派手なカラーリングが好きな人はアライ。快適性やデザインを重視したい人はショウエイ。そこそこのデザインと安全、それとリーズナブルさを求める人はカブト。ヘルメットを求めるなら、この三社がオススメだろう。
しかし、どのメーカーでもオススメするのはフルフェイスだ。一口にヘルメットと言っても種類は色々あって、頭全体をすっぽりと覆う単一の作りなのがフルフェイス。顎の部分から上に大きく開くのがシステム。顔の部分だけ大きなシールドに覆われているのがオープンフェイス。そのオープンフェイスからシールドを取っ払ったのがストリートジェットと言われるヘルメットだ。
ハッキリ言って、この中で安全性が確保出来るのはフルフェイスだけだ。他のヘルメットは転倒時、非常に危険なので止めた方が良い。側頭部や後頭部から地面に接触したのならまだマシだが、顔面から激突したら良くて打撲。悪くすれば猛スピードでアスファルトと接触し、顔面大根おろしをする事になる。デザイン的にそれぞれのバイクに合ったヘルメットというのは存在するが、やはりここは多少不格好でもフルフェイスを選んでもらいたい。取り返しのつかない怪我をしたら、二度とバイクに乗れなくなるのだから。
半キャップ――所謂半ヘルというのもあるが、あれは何の役にも立たない。ただの帽子。飾りだ。命が惜しかったら、あんなものを被って公道を走るのは止めよう。
バイクにまつわるエトセトラ 小林誉 @cb400sb
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