絶滅した竜の骨のまじないを利用して暮らす世界。
母に先立たれたハシバミとニレの兄弟。
弟のまじないが目覚めるのが遅いことを、兄は心配する。
そして、目覚めた弟の力は。
章が変わり、時代が進むと、前の登場人物たちの
業績が語り継がれていたりして、
一つの連なった世界の、着実な歴史を感じます。
古代では、まじないについてわからないことが多いですが、
後には学問の対象となり、利用の仕方も高度に発達。
私は、中世のシラカバの物語が一番好きです。
文字を知らなかった者が、本を読むことを覚える喜び。
近代は、SFミステリみたいな趣もありますね。
果たして、弟とは再会できるのか?
最後の竜とは?
面白かったです。
古代から続く竜の“まじない”が世のことわりを支配する世界。
それはやがて中世から近世へ、近代を経て終末へと。
近代はほぼSF、終末はポストアポカリプスの様相を呈していきます。
数百年を跨いで語られる様はまるで映画「クラウドアトラス」的。
各年代で僅かに繋がりを残しながらも全く異なる物語が展開され、どのストーリーも幻想的でプリミティブな魅力に満ち溢れています。
そして兄と弟の物語は長い時を経て、意外な形で結末を迎えます。
何もヒーローが勇ましくに戦ったりロマンスするだけが物語ではありません。
まさしく幻想、まさしく文学、そしてまさしくファンタジイ。
因みに個人的には近代の物語が白眉だと思いますね。