この有限なる生命の矮小な夢
森茶民 フドロジェクト 山岸
夢なのか、幻なのか、現実なのか。
私は、逃げていた……。
私は逃げているのを観ていた。
私は、平原を駆け、
私は平原を駆け、
私は、小高い丘に、石の塔が建っているのが見えた……。
私は小高い丘に建つ、崩れかけの石の塔を見た。
私は、石の塔へ、走った……。
私は、その小高い丘の斜面を、走った……。
私は、石の塔の木扉を、認識した……。
私は崩れかけの石の塔から、大量の
私が方向転換をし、倒れ臥す様に宙に浮かんだのを私は観ていた。
私は、小高い丘の斜面を、転がっていた……。
私は小高い丘の麓で、私が止まったのを観ていた。
私は、体を起こし、小高い丘と、
私は小高い丘と、
私は、息を上げていた……。
私は徐々に徐々に走る速度が落ち、ゆっくりと、だが確実に不気味な
私は私が、
私は、押し倒され、
私は私が、段々小さく成って行くのを観ていた……。
ただただ観ていた……。
やがて、
私は、何かスッキリした心持ちで寝床から起きあがった。
心臓が、ドク、ドク、と、平時より速く、動いていた。
…………どこか、満足感を感じていた……。
⚖️ ⚖️ ⚖️ ⚖️ ⚖️ ⚖️ ⚖️
私は何故か落ちていた。
落ちている。と、感じていた。
暗いかと思えば明るく、黒かと思えば白く、時々葉が付いている枝に当たりながら、なんだか判然としない空間を、「落ちている」と、感じていた。
ただただ感じていた……。
突然、何の前触れも無く、目が、覚めた。
何だか頭が痛かった……。
頭痛がしていた……。
そして、凄く混乱していた。
凄く凄く錯綜していた。
不気味だった……。
⚖️ ⚖️ ⚖️ ⚖️ ⚖️ ⚖️ ⚖️
「持ってってぇっ!」
母の晩御飯を完成させた声を聞き、その場から体を起こそうとした……。
だが、体が動かなかった。
スグに金縛りだと気付き、
「そんなに疲れてたのか」
と、自嘲しながら、どうにかして体を動かそうとしていた。
今迄、ネットや本などで、「金縛りに会ったら体が動かない」というのを見ていて、妙な先入観と、楽観視が有った。
いざ体験してみると、全く違った。
「体が動かない」という言葉から、「筋肉が硬直して云々」などと考えていたが、「体が動かない」のではなく、「体の動かし方が判らない」だった。
いくら力を入れようにも、体のどこに力を入れれば良いのか判断が付かず、体が全く動かせなかった。
私は恐ろしくて、そして焦った。
咄嗟に、家族に助けを求めようと声を上げようとしたが、声が出なかった……。
また、私は焦った。
どうにかしようと力を入れ、体を動かそうとするも全く検討違いの部位に力が篭るのを感じ、どうにか体を動かそうと四苦八苦するも、心臓が早鐘を打つ気配を感じ、段々息が荒れ始めた……。
様に感じたが、私の息は至って平常に漏れており、それに気付いた私は尚いっそう狼狽し、怖気た。
つい、目を閉じ、心を落ち着かせ様としてしまった。
目を閉じ、瞳に暗闇が訪れたか訪れていないかは判然としなかったが、目の前に焼け爛れた掌が現れ、私の顔面を掴もうとした瞬間……
目が覚め、体を勢いよく上げた。
「夢だったのか…」
と、安堵し、崩れる様に仰向けになった。
早鐘を打つ心臓を落ち着かせようと呼吸しながら、母が料理を完成させようしている音を聞いていた。
「持ってってぇ!」
母の晩御飯を完成させた声を聞き、その場から体を起こそうとした……。
⚖️ ⚖️ ⚖️ ⚖️ ⚖️ ⚖️ ⚖️
私は、車を運転をしていた。
硝子のような薄い透明な板で隔てた後部座席に、男の人が座っている様だ。
どうやら私は、タクシーを運転しているらしい。
目的地に近づいて来た時、私に、「霊から_____は貰ってはいけない」という情報が、まるで前々から知っていたかの様に思い浮かんだ。
目的地に着き、車を停め、後部座席の男から何かを貰い、何かを返した。
私は何か、達成感のような、満足感のようなモノを感じていたようだが、後ろから腕が這いより、左頭部側から男の頭が伸びて来て、
「ざぁんねぇんでぇぇしたぁ!」
という不気味な声を発した所で、
私は覚醒した。
酷く心臓が煩く、目を瞑るのに恐怖していた。
「記憶している限りでは5回しか夢を観た事がないのに、なんでこんな夢ばかり見るのだろう?」
と朧気に思いながら、
顔を洗いに洗面所へ歩いていった……。
この有限なる生命の矮小な夢 森茶民 フドロジェクト 山岸 @morityamin
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