人生を再起動しようとする一人の人間の話

ヒーローものと聞いて想像する「派手さ」とは、少し違う手触りの物語でした。
主人公は特別な力を持っているわけでも、最初から強いわけでもありません。むしろ、どこにでもいそうで、少し立ち止まってしまった人です。
そんな彼の前に現れる存在や出来事は、とても非日常的なのに、描かれる感情は驚くほど身近で、読んでいると「わかる気がする」と思わされます。

ヒーローに憧れる気持ち、変わりたいと願う焦り、誰かに認められたいという静かな本音。
物語はテンポよく進みながらも、主人公の内側の揺れを丁寧に拾っていて、派手な展開の中にも不思議と落ち着きがあります。

読後に残るのは爽快感と、「この先をもう少し見てみたい」という気持ちでした。
ヒーローの物語でありながら、これはきっと、「人生を再起動しようとする一人の人間の話」なのだと思います。

静かに背中を押してくれるような一作でした。

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