幽霊がやってきた。

tada

第1話 幽霊がやってきた。

 ある日突然、私、春夏はるなつ 秋冬あきふゆの部屋に幽霊が現れた。


 私の部屋は四畳半の小さな部屋に、テレビと机それからベッドに本棚が敷き詰められ、一人人が入るのがやっとな部屋である。

 そんな部屋にいつ通り高校から帰ってくると、机の前に見知らぬ姿の女性が正座をしていた。

 その女性は、肩ぐらいまでの長さの髪で、黒髪和服を着ていて、私と同じぐらいの年齢のように見える。頭には白い三角のよく幽霊がつけているようなやつを、つけていた。

 するとその女性は、私が帰ってきたのに気付くやいなや、正座を一旦崩しこちらに振り返り、もう一度正座をしてから頭を下げて落ち着いた声で、言った。


「今日からお世話になる。幽霊の、春夏はるなつ 春夏しゅんかです! よろしくおねがいします」


 私は思わず声を荒げて、ドアを勢いよく閉めながら言った。


「幽霊ってなんじゃー!!!!!」

 私は、荒々しくなっていた。息をなんとか元に戻しながら考える。

 幽霊って何!? そもそもあの人誰? 私の家族誰も死んでないし、けど苗字一緒だった。

 そんな風に色々考えていると、幽霊物のお決まりであるように部屋にいた幽霊は、ドアをすり抜けて頭を出してきた。


「どうしたの? 秋冬そんなに驚いちゃって、私何か悪いことした?」


「いや別にあなたが悪いとかじゃなくて⋯⋯」


「じゃあ何? もしかして幽霊が信じられないとか?」

 図星だった。


「そりゃそうでしょ。幽霊なんてそんな⋯⋯いるわけが⋯⋯」


「はぁー。もしかしてあなたのお母さん何も言ってないの?」

 私のお母さんは適当な人なので、過去にも何回も何回も重要なことを私に言わなかったことがある。今回もそのパターンか? と私は、頭に? を浮かべる。

 すると幽霊は、さっきまでの穏やかな感じからは、想像できなぐらいに息を荒げて言った。


「あいつ。先に現世に行ったのに、娘にちゃんと説明するって言ったじゃないか! あいつは昔から昔から本当に適当すぎだ」


「⋯⋯⋯⋯」


「わかった。私が説明するね。私は、幽霊。あの世から現世に来た幽霊。そこまではなんとかついてきて」

 未だ納得はできないけれど、自分でもなんとか折り合いをつけ、相槌を打つ。


「⋯⋯⋯⋯」


「で、何故私が現世に来たかというと。言ってしまえば生き返るため、神が出した課題を達成できれば私は、生き返れる」

 話が大きい。人が生き返るなんてそんなこちが、あるの?


「⋯⋯⋯⋯」


「ああ課題を言わなきゃわからないよね。了解了解。課題はね⋯⋯私とあなたが付き合うってだけ」

 私はそこでまた声を荒げた。先ほどよりも数倍──数十倍だったかもしれない。


「は!? は!? はーーーーーーーー!?」


「変なこと言った?」

 幽霊は今言ったことが、さも当たり前のことのように言ってくるので、私はなんとか言葉を出す」


「いや私達女同士。そもそもその前に私生きてる人間。あなた死んでる人間。その二人が恋愛? 無理無理」

 当たり前だ。そもそもそもそもその前に普通に生きてて彼氏の一人もできたことが、ない私がいきなり幽霊と恋愛なんてそんなの無理に決まっている。

 しかしこれも当たり前ではあるけれど、幽霊はそんなこと思っていないらしく頭だけ出していたのを体全身をすり抜けさせて言った。


「大丈夫だって。あなたのお母さんだって昔は幽霊だったんだから」


「へ? 今なんて?」

 気になりすぎる文章にに思わずへ? なんて出てしまったのを恥じつつ訊いた。


「だからあなたのお母さん、も昔は幽霊だったからあなたも私と恋愛できるよって言ったの!」

 私はその言葉を聞いた瞬間、階段を降りていた。それはまるで、チーターの最高速のような速さだった。

 そしてキッチンにいるお母さんの下までたどり着くと、私は単刀直入に訊いた。


「お母さんって昔幽霊だったの?」

 するとお母さんは言った。

 当たり前のように言った。


「そうよ。お母さん一回死んでるの。あ、もしかして春夏きた?」

 私は、放心状態になりながら自分の部屋を指差した。


「はは、はは、はは」

 そんな変な笑いも出てしまぐらいの驚きだった。今まで生きてきてずっとそばにいた人が、元幽霊、しかもその子供が自分。

 こんなの驚かないほうが間違っている。

 しかしそんな驚いている私などどうでもいいように、二階からわちゃわちゃした声が聞こえてくる。

 多分あの幽霊が、お母さんに怒っているのだと思う。


「もう春夏なんであんなに起こるのよう。ちょっと忘れてただけなのに」


 それからしばらくして近くでお母さんの声がしたので、私は放心状態から戻った。

 そしてお母さんは座り込んでいる私を見つけると、そのまま言った。


「春夏が来てって言ってたわよ」

 私はおとなしく立ち上がると、今度は亀のようにゆっくりと階段を登った。


「あ、きたきた。秋冬、私と付き合って!」

 私はそんな幽霊に一言言った。


「嫌です」

 そして私はドアを開け、そのままベッドにダイブをして眠りに入った。

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