horloger ~罠~

@pikorui0908

オルロジェ、声劇用台本2、修正入る可能性あり

戦時中、敵の追跡から逃げ延びて森の中に迷い込んだ兵士が見つけた一件の建物は、怪しげな主人が営む時計屋だった。


ーーーーー以下、台本ーーーーー


ドアチャイムの音。


男「こんな所に店があったのか…看板は無かったが。あっちもこっちも時計だらけだなぁ」


店主「いらっしゃいませ」


男「うわっ、びっくりした」


店主「本日はどのようなご用件で?」


男「ここは時計屋…だよな?」


店主「それ以外にございますでしょうか、おかしなことを言うお客さんだ。

…おや、これはまた随分と古い懐中時計をお持ちで」


男「放っておけ、これはまだ動いている。…少し休ませて貰いたかったが時計屋に用はない」


店主「まぁまぁ、せっかくいらしたんだ。ゆっくりしていってください。どんな時計でもすぐに直して差し上げますよ。お代?大丈夫です、安くしておきますから」


男「おい、人の話を聞いているのか」


店主「おっとこれは困った。お客さん、これは直すのに少し時間がかかりそうですよ」


男「だからこれは壊れていないと言っているだろう」


店主「どんなに錆びれた時計でも、私はちゃんと直してあげられるんですがねぇ…」


男「これはまだちゃんと動いている。直す必要などない」


店主「まぁ、こちらに

腰掛けて。ちょっとお客さんの時計を拝見させてくださいよ、見るだけですから」


男「修理を頼む気などないぞ。そんな時間はないのだからな」


店主「ちょっとだけですから。それに今はまだ外に出ない方がいいと思いますよ、先程2人組の兵士がうろついていましたからねぇ」


男「なんだと?…くそっ、もう見つかっていたのか。仕方ない、不本意だが少しここで休ませてもらう」


店主「代わりに少しその時計を見せて頂ければ」


男「…少しだけだぞ」


店主「はいはい、分かってますよ。どれどれ…やはりこれはかなりの年代物だ。細工も美しい、しかしながらに手入れもしっかりされている…大切な人からの贈り物、といったところですかな?」


男「もういいだろう、返してくれ」


店主「ねぇ、お客さん。この時計、あと僅かで壊れてしまいますよ」


男「何を言う、まだしっかり動いているじゃないか」


店主「いえいえ、限界は来ています。ここまで古い物は流石に直すのは厳しいですねぇ」


男「だから直して貰う必要はないと言っているだろう!もういい、返せ」


店主「直す事が無理なら、いっそのこと壊してしまいましょうか。…ほら、こんな風に」


ガシャン、と時計が壊れる音。


男「何をする!」


店主「お客さん、大事な物はそうやすやすと人に預けちゃいけませんよ。じゃないとほら、この時計みたいにあなたも…」


男「お前っ…!ぐはっ(後ろから刺されて)」


店主「(声が変わる)手こずらせやがって。おい、さっさと剣を抜け、ずらかるぞ」


男「お前達…そういうこと…か…」


店主「(再び店主の声で)さぁ、お客さん。これはお返ししますよ」


男「卑怯な手を…」


店主「(声がまた変わる)あの世でその時計の贈り主と楽しくやるんだな、ハハハッ」


ーーーーーーEND

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

horloger ~罠~ @pikorui0908

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る