第三獄悪魔の歯車
「ふむ、地獄かな」
深夜の二十四時間営業のファミレス、そこには無数、それも全て、彼以外は同じ顔だ。
「それも全て黒泥人形ときた、あれは獄中生活が嫌なキチガイの浮世絵師が思いついた技、が、まぁ、それでもこれは多いわなぁ」
「まぁ、ゆっくりしてってくれ、店員も全員、死んでいる頃だしな」
「そうか、ではドリンクバーのみを楽しむ事にしよう」
暗印斎がそう目の前の黒泥人形に語りかける、テーブル席は二人、対面状態である。
テーブルにはウーロン茶がコップに二つ。
「そして、貴様がオリジナルか?あくまで魂の問題であろうがな」
「あぁ、確かにそうだな」
「籠の中の魔鳥がポルターガイストとはいささか古典的だとは思うがね」
「だろう?」
魂を持った黒泥人形が笑う。
「そう笑うな、感情がこもってないぞ?」
暗印斎がそう指摘した。
「感情ねぇ、貴様に込める価値があるとでも?」
黒泥人形がどこか含みを込めて言った。
「………それもそうだったな」
「まぁいい、俺にとって大切なのはこの偽魂を持ったヤツらを配置させた事でもましてや俺の無貌さを指摘される事でもない」
「で、用件は?」
パチン、と彼がスナップを鳴らす。
「お前を溶かして
「なっ!?」
暗印斎が驚愕する。
辺り一面にいた沢山の黒泥人形達が目の前の魂を持った黒泥人形を除いて液状化する。
「これでも2/7なんだが十分だろう?こいつらは虐めや虐待と言った負の感情をありったけ叩きつけて生きた、つまり呪の塊だよ?」
「ばかなぁ!うぼぇっ!」
そして暗印斎は黒い泥の海に沈み、溺れた。
魂を持った黒泥人形は姿を黒龍に姿を変える、そして黒い泥の海に溶け込み、その黒い泥の海はファミレスのガラス張りの部分を割り、外に出て、辺り一面を飲み込んでいく。黒龍はそんなおぞましい洪水の中、歌う。
「三日月から鷹が飛びだったが三日月は鷹を狂わせ続ける、鮫も暴力に溺れれば、それを感じた大蛇も暴力に魅了される黒き龍と化す、黒き龍は鳶を食らい、世俗を濁らせて、豚を猪に変えていく、狼は既に死んでいる」
猟奇人形グロテスク 飛瀬川吉三郎 @hisekawa
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