第二獄濁った救済と白き殺意


かつて、東京が江戸と呼ばれた時代、邪教真天教があった、それはバテレンを元にしていたが、集団自殺をする者達で有名だった。


幕府は当然取り締まる、山田浅右衛門、死刑執行人も兼ね、首切り浅右衛門、人斬り浅右衛門とも呼ばれた裏の顔、天誅人として。


かの真天教の教祖、木製の十字架をした暗印斎くらいんさいを天誅をくださんとした。


「何故、貴様は人々を死晒せていく!」


山田浅右衛門は暗印斎の目前にして叫ぶ。


暗印斎は言う。


「俺は鮫河橋出身でな、非合法の私娼屋が集まる『岡場所』という遊郭があった夜鷹の街、そこで私生子として生まれた、そしてそのまま100平方メートルほどの湿地帯の谷底に建つ1370戸の細民長屋で育っていく、そこには隠れキリシタンがいてな、それが義理の父親、奴との関係はそれなりに幸せだった、だが、ある日、本当の父親が来て、目の前で義理の父親を殺した、そして言ってきた、神がいるなら何故、この男は死んだ?救われなんだ?とな、だから、俺様はこう答えた、『死こそが救済』であったとなぁ」


「そんなに知らないがバテレンにとって自殺とは禁忌でなかったのか!?」


「いいや、


「気違いが!!」


そして、山田浅右衛門は切りかかる。


暗印斎は中指を月だし、何かを唱え始める。


そして、山田浅右衛門は着物が抉り取れて、そのまま上半身に紫色の十字の刻まれた。


「呪いの十字架、暗黒冥導じゃーな雑魚」


と、勝ち誇るがーーー


「いいや、まだだ!」


「!?」


山田浅右衛門は倒れない、なぜならば。


「貴様を裁く、それだけは覆らない!」


そう、彼こそは処刑人、そしてーーー


「くくっ、そうか、貴様が俺の救済か!」


暗印斎は笑う、笑って狂った。


「あははは!はははは!!!」


そして、そのまま首を跳ねられた。


「がふっ」


山田浅右衛門は彼を殺した直後、自分の刀で心臓を抉り刺して、自害をしてしまう………


そして、彼は死んだはず、そんな彼が現代に甦り、またもや真天教を広めていったのだ。


人間を人形にするマインドコントロールの技術、それには自殺扇動がある。


彼はそうして今日も自殺率を高めさせていく、階の全てに適当なテナントを用意して一階から最上階まで吹き抜けのある雑居ビル。


白衣と十字架をした生気のない顔をした者達が無数にいて、その中心に暗印斎がいて、にやけながらぶつぶつと独り言を言っていた。


「父さんの死にも意味はあったんだぜぇ」


そこに突如現れた猟奇人形グロテスク!


自殺しようとする者達が一人、また一人、殺されて、彼等の一部は正気を出して、悲鳴をあげそうとするがそれも殺される、凶器は両手に鉈、それはもうかなり血みどろだった。


「やー、こんなに多いとありがたいですねぇ、こんなにも闇への生け贄があるなんて」


「おいこらあくた野郎、それは俺のもんだ」


白いロングコートに白いズボンにとてつもなく古い木製の十字架をした男が言う。


「同じ死なら別にいいでしょ?これはそうだ!お手伝いと呼ぶべきでしょう?」


「違うな、断じて違う、俺の呪いの十字架暗黒冥導で自殺させてやらないと意味がない」


「それって自殺を促すだけの力でしょう?ならば通じない欠陥な術式でしょう?」


「いやいや、あれから数百年数十数年、俺様は魂の在処しょざいに気づき発見した、今の暗黒冥導は魂そのものを無へと返す、万物に魂はある、よって、俺様の呪いの十字架暗黒冥導は完全なる死の救済を何だろうと与えられる、例え、俺達のいる建物でもなぁ!!!!」


暗印斎は天井に向けて呪いの十字架暗黒冥導を放ち、天井を崩壊させた、それはやがて建物全体を覆っていき、建物を倒壊させた。


その瓦礫の下から猟奇人形グロテスクは瓦礫をどかして、這い出てきて、そして愚痴る。


「さぁて、自殺率と殺人率、どっちが高くなれるかを競いあいましょうかねぇ」


その猟奇人形グロテスクの言葉を皮切りに

悪趣味な凶宴きょうえんは幕を開けようとしていた。




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