第一獄黒い家ビュトス!


真っ昼間、おやつ時、しかし、そこを魔術的素養のある者ならば『常夜』と判断するだろう、しかりて、その家、魔術的素養なき者ならば住宅街の一軒家に思える、しかし魔術的素養ありき者なら洋館に見えてしまう。


黒泥人形、それは膨大な悪意によって初めてブラックウーズが人型になるモノである。


つまり、黒泥人形を者はとてつもない悪意を持っている、そしてその者、術者を暗黒の元凶主ダーク・アダムと呼ぶ。


さて、つまりは洋館の家主が暗黒の元凶主ダーク・アダムと言うことである。


「ご主人様」


洋館の中、暗黒次元ダーク・ディメンション、それは暗澹なる未来と同じようにどす黒い。


家具は全て黒一色、灯りは一切ない。


しかし、人影はくっきりとある。


グノーシスで深淵の呼び方ビュトスと呼ばれる黒き家、そしてここら一帯の『常夜』を含めた全ての区域は虚数空間と呼ばれる場所。


その中にいる特に禍々しき存在の片割れ。


その声は、女淫魔サキュバスの声音、いや、その母、アダムと違えた始まりの魔女、リリスか?そうとも思えるぐらい妖艶ようぜつであった。


そんな彼女の服装はメイド服であった。


「なんだ?」


そう返す者、顔のみやや黄色が混ざっていると思える風貌、この場に似合うように黒衣。


禍々しき存在の片割れはとてもおぞましい。


「我らが四禁人形の一角猟奇人形グロテスクを『秋田鬼封館』より私に連れ出させたのはどういう嗜好で?」


「何も考えてないよ、こんな下らん世の中だ、人が沢山死のうがなんだっていいさ」


と、無感情な音が木霊こだました。


「デズモンド・モリスの人間動物園は殺人率が高いと自殺率は低い、自殺率が高いと殺人率が高いとありましたがもしかして?」


と、女は返す。


「全然違うよ」


それを否定する男。


「むしろ、自殺率に関しては社会責任だしな、なんだって血の池地獄皆で泳げば怖くないっ!だっけ?」


血の池地獄は血にかかわる罪を犯した者が落ちる、ここでは刃傷沙汰など等だろう。


「戦争ですか?」


そう問う彼女に


「戦争だな」


そう返す男。


「大半の場合溺死しますよ、肉か心がね」


そして彼女は不気味にくぐもって笑う。


「四禁人形の四番目は


人間を人形にするマインドコントロール


だからね、四禁人形の二番目は魔女人形ソルシエール・プーぺの君だがね」


と彼が言えば


「今ではメイドですよ」


と、彼女は返す。


「そうか?それはありがたい」


と、彼がお褒めの言葉を下賜すれば。


「ちっ」


彼女は舌打ちを交えてからこう吐き捨てた。


「すいませんが腸を実際にねじきれるまで笑わせるやり方ご存じありませんか?」


「俺をまず笑わせるのが不可能だろ」


「ちっ」


「舌打ちするな」


シュポッ


暗い所に火がついて紫煙が香ってきた、そして。


「スパァ」


「煙草を吸うな、俺は今禁煙中なんだ」


「あぁそうでしたか、ホホホホホ」


「ちっ、フラストレーションしかたまらん」


「わけましょうか?」


「なら一本」


「無様に全裸に土下座してくれたらですが」


「ならいい」


「残念」


「死ね」


そんな会話を二人は続けていく。


そうこうしてる合間に外に黒泥人形が増えていく、それはもう、増えていく。





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