猟奇人形グロテスク
飛瀬川吉三郎
第零獄猟奇人形グロテスク秘話
その者達、鬼の多き山の村に住む『血族』と呼ばれる者達、今でいう中国からの渡来人で『
いいや、特異な場合ではそれは違う。
それは限りなく『人間に近い人形』、肉と物質を融合させた体で出来ている、そのため、血の色も悲鳴の声音も人間と同じ、血肉を抉った時に出る時だって同じ、やがて、それはとある処刑人の手によって『断罪』されて、その『人間に近い人形』を使った特異なグランギニョルの劇場主にして人形師は極東の国、日本へと渡っていった。
そして、なんと最悪なる因果の導きか、そのおぞましき人形師は『血族』の者と出会い、やがて、『人間に近い人形』と『
そして生まれたのが猟奇人形グロテスク。
⛓️⛓️⛓️
真夜中、路上でホープ、俗にしょっぽと呼ばれるタールがキツい煙草を吸っている男が目の前の惨状にも関わらず喫煙を続ける。
家出少女と不良娘が路地裏で人知れず如何わしい行為を及ぼうとしていた、それを何者かが乱入ーーーそれはもう冒涜的なーーーにより、惨殺されて、血の海、四肢がバラバラなのは決して殺したが殺したかどうか分からないため何度も凶器を振り落とすのではなく、単なる余興、そして本命は生首二つ、それでその存在はジャグリングをしていた。
まるで、目の前を楽しませるように。
「我らが王の末裔よ」
そのジャグリングをしていた存在は言う、男に近づけば、道化師の姿が月光でかろうじて分かる、しっかり分かるのは血の臭いだ。
「確かに俺はここにいる、しかしここにはいない」
「えぇ、四禁人形の三番目、定まらなかった悪意を垂れ流し、それをブラックウーズという黒い不定形のモノにして、その余りの悪意のあまり人の姿をとってしまう『黒泥人形』、ホシェフカバラと呼ばれる類いですが私とてホシェフカバラの産物、四禁人形の一番目、明確な悪意の元作られた『猟奇人形』、王の末裔と同時に私めの弟でもある、いやいやしかし、兄を敬えとは言えまい、こうしてたのしませることこそ私めの使命」
と、『猟奇人形』は『黒泥人形』に言う。
それに『黒泥人形』は
「四禁人形の三番目は邪悪な人形師が他の人形を使って悪行をしていない時のみ使える、これはバイロケーションと同一の人間が同時に複数の場所で目撃される現象、またはその現象を自ら発現させる能力を指す。『一身二ヶ所存在』と表現されることもある、体外離脱の一つだわな、いやぁお前が羨ましい」
と返した。
「そうですね、『黒泥人形』は実体がない、見えるには見えるし触れるには触れるが何よりも人間を殺す事ができない」
『猟奇人形』が対話相手を喝破した。
「そこでお前だ」
ホープを一気に吸って、そしてふかす『黒泥人形』、そして、その存在はこう行った。
「無聊を慰める、事はできないがこうしてお前が殺しをしてるだけで俺を作った人形師は嬉しかろう、お前の目的は『闇への生け贄』のための殺戮行動、王の末裔への奉仕だ」
「『闇への生け贄』……エッヒェヒェヒェヒェヒェ!あー、なんと甘美なる言葉!えぇもちろんですとも!」
『猟奇人形』が奇怪な笑い声を交えながら言った。
「そのまま続けてろ、誰も許さないが王の末裔は許す、そして『闇』は未だに胎動している、その鼓動と脈動を感じているだろう?」
「続けますが、感じませんよ」
「それは足りない証拠だ、もっと励め」
「分かりました分かりました、いっそどさくさ紛れに
『猟奇人形』は不気味に笑う。
「どさくさ紛れってなんだ?」
それに『黒泥人形』は質問をした。
「さぁ?」
『猟奇人形』はとぼけた。
『黒泥人形』は煙草を地面に落とした、踏まない、踏んでも、踏みしめられないから。
「まぁいい、続けてろ、『闇』、それは忘却された悪意の塊、絶対悪の具現、アカシックレコードの
『猟奇人形』はそれに頷き、そしてーーー
「えぇ、私めは
と言い、それに
「そうか、頑張れよ、四禁人形の一番目『猟奇人形』ーーーグロテスクよ」
と、『黒泥人形』は鼓舞した。
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