六話

…どのくらいだったのだろう。

雰囲気の変わった空木さんと、

必死になって試みているらしい

朔真くんの雰囲気に呑まれて、

時間の感覚があやふやになる。

突然、朔真くんの身体が綺麗な金色に包まれた。

「わっ!」

私の声に驚いたのか、彼も瞳を開く。

「う、わぁ……!」

紛れもない感嘆の声だった。

自分の中で見た金色が、

身体を綺麗に包んでいる。

思い返したように

椀の形にしていた手のひらをぐっと高くあげると、

その中に金色が溜まっていく。

「これが、僕の術…!」

キラキラと輝き出す彼の瞳を見ていると、

心が痛くてたまらなかった。

ついこの間、入ってきた子でさえも、

こんなふうに術を使えるのに……。

「馨さん!」

見てくださいよ!!

楽しげに笑顔を向ける彼に、

思わず嫉妬しそうになって頭が冷える。

…そんなこと、

思ったって仕方がないとわかってるのに。

羨ましい。

簡単に術が使えて。

それも誰にも恥じる必要のないすごい術。

私はできない。

術のクオリティ以前に、術すら使えない。

どう足掻いても視界を埋める、金色の光。

あぁ妬ましい羨ましい。

「ま、あとは自分で頑張ってみてよ」

コン、と湯のみがテーブルにおかれる音で、

はっと我に返った。

「んじゃ、今日はありがとー。

またよろしくねん」

バイバイ、と手を振る彼。

「ま、待ってください!!

私は?!私の術は」

「うん、君ね。無理。」

「え?」

今日1番の、爽やかで満面の笑みだった。

「無理かなぁ、おれが教えても。」

「どっ、どういう意味ですか!!?」

「そのままの意味。

さ、帰った帰った!!」

ほら立ってー、と言って玄関へ押し出される。

「待ってください!私にも術を」

「…うるさいな。

無理ったら無理だよ。ほら、帰って。」

ドン!と突き飛ばされて、

私と朔真くんは放り出された。

「…………馨さん」

「…帰ろか、朔真くん。」

無理?

頭の中で疑問が渦巻く。

ダメだ、まだ仕事中だ。

考えないようにしよう。

後輩の前だ。ちゃんとしなきゃ。

あぁ、私は先輩だから。







「初めて見たなぁ、あんな術。

……おれがいっても無理だよ、あれは。

自分で自覚するしか方法はないな。

……ま、それ以前に教えられないか……。」

ザザァ……!

風に煽られて、外の森がざわめく。

ズズ、と茶をすする音だけが響いていた。

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隠世役所生活安心課 諫早 @makebelieve

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