まるで新本格ミステリを読んでいるかのような、限定状況下で行われるケイドロ攻防戦がとても面白かったです。
階段・エレベーターなどを駆使して2つのチームが世界の命運をかけてケイドロするのですが、次々に明かされる謎がページをめくる手を止めさせません。
個人と世界を直結させるセカイ系的な思想を持つコリーというキャラクターがとても魅力的で好きになりました。
ただジュブナイルとしては、『海辺の王国』が生涯ベストな私としては少年少女の成長を描かないジュブナイルってアリなのかなと個人的に思いました。大人は成長しているようですが…。
ですが賛否でいうと賛の意見が9割(!)ですし、いまカクヨムで最注目作であることに間違いはありません。ぜひぜひその目で確かめてみてください!
そろそろ読書感想文を書かなくてはいけないけれども読む本がまだ決まってないとか課題図書じゃないといけないとかで悩んでいるそこのあなた。
まあ、だまされたと思って、この本をお読みなさい。
その結果――
(1)「だまされたーっ」
と思った人には、素直にお詫びいたします。どこの誰とも分からない怪しい大人の口車に乗ってはいけないということを心に刻みつけて、たくましく生きのびてください。
(2)「面白かったーっ」
と思った人は、もう大丈夫。あなたの中には、4人の少年少女と4人のテロリストのいろいろな考え方が染み込んでいるはずです。退屈なように思えた課題図書でも、いろんな登場人物のキャラクターを想像したりして読んでみれば面白くなっていくことでしょう。そうなったらもう、感想文なんか楽勝です。(たぶん)
その結果――
(3)「楽勝じゃなかったーっ」
ごめんなさい。どこの誰とも分からない怪しい大人の(以下略)
幼少期、日本に住んで普通の学校に居たら一回はしたことがあるであろうケイドロ。
みんなで足を揃えてチーム分けをした鬼ごっこの延長線上のあの遊びを本気でやったらどうなるのか?
それをテロリストまで交えて本気で行うのが今作。
筒城灯士郎先生の作品で初めて読んだオリジナル作品です。
僕が推したいのはなによりも敵キャラの存在感。
こういったいわゆるジュブナイル系、少年少女が活躍する作品はとかく相手は「大人」という抽象的なものになる事も多いが、この東向きのエミルはそこが違う。
私はむしろテロリストサイドのコリーというキャラクターに強い魅力を感じました。
彼はテロリストであり、誰がどう見ても完全に悪人にも関わらず、そして自分自身も悪人だと認めながらも主人公たちに対して、子供だと認めながらも正々堂々ケイドロに興じる器量と純粋さがあるのです。
私はこのコリーという存在、キャラクターがこの小説の面白さを引き上げ、面白さを倍増させていると考えています。
また作中、実際の本になった場合を想定している部分があるが、そちらは正直web版では若干読みづらさを感じ(それは作者も重々承知していると思うが)、この作品は改めて本の形で読んでみたいと思いました。
少なくとも私はもう一度始めから読みたいと思っているし、もし読むのを迷っている方がいるのならとりあえずまず一章を読んでみてほしい。
きっと後悔はしないと思う。
ケイドロ。子ども時代、誰もが親しんだであろう遊び。
しかしながら、まさかそれがテロリストと世界の命運をかけて戦うための手段となろうとは!
舞台となるのはニューヨークはマンハッタン、とある高層マンション。
マンション全体を使ったケイドロ遊びに夢中なエミル、ヘディ、ダイスケ、ラスティの中学生四人組はある日、血まみれ傷だらけの瀕死の男から【黒のケース】を託されます。
彼を追いかけてマンションに雪崩れ込んできたテロリストたちから逃げ出すエミルたち。
「逃げて、逃げて、――世界を救え!」
彼の最期の言葉を背に受けて、ここにエミルたち4人vsテロリストの熱いケイドロゲームの火蓋が切って落とされた!
息つく間もないハラハラドキドキの展開が続き、目が離せません!時々間に挟まれるお話にもいったいどんな関係があるのだろうとそわそわさせられます…これは素敵な物語に出会えました!
私個人としては常にリミットブレイクな超人・ダイスケがめちゃくちゃ好きなので彼が活躍するたびに小躍りしてしまいます、が、登場キャラクター全員魅力的なので結局はみんな好き。
是非にいろんな方に読んでほしい作品です!