比較的穏やかな時が流れる(上)から、一転して驚きの連続な(中)、明るい雰囲気で幕を開けたのに最後は衝撃の(下)。とても読みやすい文章で書かれているので、短時間でサラッと読めてしまいますが、内容がとても濃い。作者さんの他の作品もぜひ拝読したくなりました。
恋愛に発展するよりも早く終わりを迎える物語がすきで、このお話はまさにツボでした。切なすぎる。悲しすぎる。そして思い出した時にはいつも遅すぎる。それでも思い出さずにはいられない。恋と呼べるものか分からない。だけどその時身を焦がした思いは、今も燻りつづけている。そしてきっとこれからも、柔らかな熱をもって苛み続けていくのでしょう。切なくて、悲しくて、息苦しくて、だからこそ強く胸に残る物語です。
十三歳の春。芽生えた恋心は必然のようで。けれど、中学生がつらぬくには厚い壁がそこにはありました。育ちきらないまま失った想いはカタチを変えて心を縛る。物悲しい痛みが静かに沈みこむ、独特な雰囲気の物語でした。
主人公の最初の恋なのでしょうね。男子中学生。ちょっとしたことで好きになったりするものです。好きが持続しないことも間々ありますよ。クラスが変わったとかね。主人公もきっと持続しなかったのだと思います。失恋といってよいのかわかりませんけれど。そのあとも追い打ちをかけるようにお話がつづいてゆく主人公を置き去りにしたように。最後は静かで寂しい気持ちだったのかもしれません。どうでしょう。