第2話 インキュバシズム、開始 その2

次の日。

シドとユキシロは街中を二人きりになってふらついていた。

発端は単純明確、マリの勘違いから始まった


「シドさんに任せてよろしいのかちょっとしたテストで判断します」

「テストって……、なんか不吉に聞こえてるぞ」

「ふふふ、楽しみしてくれますか?」

「いやあ、やると一言もいってないけど」

「じゃあ今からテストの内容を教えますので明日からがんばってくださいねー」


無茶苦茶で強引なマイペースにそのまま巻き込まれてしまった。

テストの内容は簡単でちょい驚愕することであった。

『体内に毒を注入されたユキシロを24時間以内に解毒すること』

彼女の命を賭けてゲームしよう、ということが表面上の意図だった。

因みにマリの手のものには解毒剤はなくてお昼ごはんで食べたシチューの中に入ったと告げられた。

一緒に食事を済ませていたシドの体内にも毒は流れていたらしかったけど、なぜか『エルフにしか効かない毒』だったので無用だった。

何のための企みなのか誰も知らない状況であるが、ユキシロが命の危機という場面に遭遇している事実は変わらない。

何もかも納得し難いことばかりであるけど、シドには頷くという選択肢以外はなかった。


「しっかしこっちはメルヘン過ぎるっていうか、ぶっちゃけ言うと落第点しかつかない風景だな」

「あのね、わたしのことはどうするつもりなの? ほっとくの?」

「ん? いや、別にいいっしょ。何の手がかりもないから、フラフラとうろついても」

「なっ……」


呆れたといいたがりそうに頬を膨らまし強烈な目線で睨みつく。

原因たる彼女からヒントの欠片も与えられなかったから、シドの行動範囲にも制限がかかることも当然であった。

そもそも薬で解毒できるんだったら最初からシドを試すという行動はとらなかったはず。

もちろん出された問題は謎賭けみたいなもので、自分で解かなきゃいけないものだ。もしかしたらと思い街中の店という店は全部回ってみたけど、それっぽい薬はなかった。


「仕方ない。もう諦めることにしよう。さよなら、ユキシロよ」

「キィィィィィィィィィィィィィィィー!!」

「おっと毒が効いてきたのか。街中で暴れる前にやっつけるしか……」

「ちがーーーーーーーーーーーーーう!」

「もっと構いなさいよっ、この根性なし! そもそもあんたのせいでこんね目にあったからっ。責任とりなさい!」

「だってさ今更なんだけどお前を治させても俺に何のメリットがないからな」

「じゃどうしてわたしをその……攫いに来たのよ。あんたっ」

「ビジネス、かな」

「何のビジネスなのよ。まさかわたしを奴隷にして競売によこすつもりだったの!?」

「あ、誤解しないで欲しいんだが。とある依頼主から頼まれた件だ。むろん依頼主に関する個人情報は機密なんであんまり詮索しないでくれ」


二人が大通りで騒いでいたせいで周囲の目を引いてしまった。

エルフと悪魔が街中で口論している場面は相当珍しいものだから。

周りから注目されていたことに気づいたシドはユキシロの手を引っ張って


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現生人類終末とインキュバシズム @zhin

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