心あるロボットに夢見る時間を

雪鼠

第1章 神父様と少女の秘密の時間 

始まりはベッドの淵で

「神父様、あの話ってなあに?」


「あの話?」


 子供用の小さなベッドが、部屋の隅から隅まで並んでいる。スースーと寝息を立てる子供たちは朝まで起きる気配がない。ただ一人、様子を見に来た私に話しかけてきた彼女を除いて。


「お兄ちゃんたちが言ってた。神父様から聞く、夜寝る前の特別なお話」


「そうか……。最近は話さなくなってしまったからね。でも今はもう寝る時間だ」


 少女の額に張り付いた髪の毛を払いのけ、私はそっと口をつけた。それは、この子たちへのほんの一握りの愛情表現。様々な事情を持つ子供たちにとって、愛がある状態も愛がない状態も毒になりえる。愛を知りつつも、彼らにとって高い壁となる社会を生きていくだけの心を鍛える。厳しさを教えるために、私は自らの立場を戒めなければならない。


「眠くないんだもん」


 本来であれば、このような甘えを許してはならない。しかし、いつも苦行を強いることになる年長の彼女のお願いには、少し気を緩めてしまう。


「特別だ。これを聞いたら寝るんだよ」


「分かった」


 私の口から紡がれる言葉を、今か今かと待つ彼女の瞳は期待の光に満ちていた。これではもっと眠れなくなってしまったなと、困ってしまう状況も愛おしく感じる。私の気苦労など知らないで、純粋な気持ちを表に出す彼女が一人で生きていくことができるのか、また一つ悩みの種が増えていく。


「それは随分と昔のこと。一風変わった家族のお話」

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