世界は空想で溢れている 4/4

 そうして、女神を怒らせた僕は、空想少女の手を取り異世界の空の下走り出す。


 ……とは言っても、深い森の中では青空なんて見えないけど。


「……ごめんね」


「謝る必要なんてないよ。それに、君のスキルは良いスキルなんだよ」


「でも使い方も効果も、わからないの」


「大丈夫。君が望む空想を、思い浮かべればいいんだ」


 そうすれば、それはきっと具現化する。


 彼女は目を閉じ、祈りを捧げるように胸の前で手を組み呟いた。


私だけの空想の物語世界は空想で溢れている


 すると、森はタンポポの綿毛の舞うタンポポ畑に。

 うっそうとしていた木々には、桃の花が咲く。


「だってそれは、僕にできるささやかな『君にだけの贈り物君だけの空想の物語』だから」


 まるで桃源郷のような景色の中、彼女は微笑む。


 それは今まで彼女がクラスの中で見せたことのない、僕だけが知る、とびっきりの笑顔。


 クラスメイトたちは知らない。


 彼女が持つスキルは、元の世界で与えられたものだということを。


 きっと女神は気づいていない。


 僕にスキルが与えられなかったのは、僕が現実に存在しないクラスメイト彼女のイマジナリーフレンドだから。


 そう。


 僕は、彼女が作った初めての空想。


 彼女が望む、彼女を見守るだけの神様――


 彼女が僕を作ったのが先か。

 僕が彼女に贈り物をしたのが先か。


 きっとそれは、この無限に広がる空想の中では些細なことに過ぎない。

 と、僕は考える。

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クラスごと異世界転移したけどスキルがなくて追放された僕は、ハズレスキル持ちの空想少女と世界を作る【4話完結】 江東乃かりん(旧:江東のかりん) @koutounokarin

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