第9話 公園
次の日の夕方、ハカセがいない間に支度をして私の地元へと電車に乗って出かけた。
ハカセが話していたことが本当かどうか確かめに行くためだ。病気の
私の命を助けようとしてくれたのに、なんで謝るんですかと私は言って、「ただ真実かどうか確かめたかったんです。こちらこそすみません、突然こんな話をして。ありがとうございます。そこまでしてくださってるとは思っていませんでした」と感謝を伝えた。
ねむりは先生に私に
私は病院から外に出ると、大きく
遠目に駅の一部分が見え始めた時、体が急に重たくなるのを感じた。病気のせいかねむりのことで悩んでいるからか分からない。私は一回実家に帰って休んでいこうかとも考えたけど、家族の悲しい顔を思い出すとその考えは消えていった。
私は
その
動き出した電車の窓からは、オレンジ色からうっすらと暗くなってゆく街が見える。その景色を見ながら自分がどうしていかないといけないか考えを巡らす。きっと、これからキツイ判断をいくつかしないといけなくなる。それは大事な人たちを悲しませないために
駅のホームを出ると外はもう暗くなり、空には星がいくつか光っていた。町を行きかう人たちもどこか急ぎ足で、それぞれの家へ帰っていくように見える。私もハカセの家に帰ろうといつもの交差点の横断歩道を渡ろうとしたとき、「まいご」とどこからか声が聞こえてきた。
声のしたほうを見ると、そこにはグレーのシャツにベージュのズボン姿のハカセが駅の方から歩いて来ていた。気持ちが落ち込んでいたせいか、いつも見ているハカセの顔を見たときホっとした感情を覚えた。
「ハカセ。どうしたの、どこか行っていたの?」
「あぁ、
ハカセはいつも通り私に話すけど、表情はどこか沈んでるようにも見えた。
人の流れにのって家の方へハカセと歩き、駅前の明るい街を抜けると、さわがしかった人達の声がだんだんと消えていった。どこか遠くで
そんな道をスタスタと2人で歩くけど、会話は全然なかった。ハカセは昨日のことを気にしてるのか、目は遠くを見ていて考えこんでるよう。坂道を
だめだ、やっぱり今日ハカセに話しておかないと。いつまでもこんな気持ちのままじゃいれない…。ハカセが黙っているのも、私と同じように重たい空気を感じているからだ。
私は
「ねぇハカセ、この坂道をもっと登ったところに街を見渡せる公園があったよね。今日ひさしぶりに行きたいんだけど、一緒に来てくれない?」
私はハカセの
ハカセの家へと向かう曲がり角を通り過ぎ、
しばらく登って行くと雑木林がなくなり
私は久しぶりに見る公園の景色に
私は公園のブランコへと
「ハカセも来て、やっぱりここの景色いいよ」
私は街のほうを指差してハカセに声をかけた。
空に浮かんでいる三日月が、ときおり雲に隠れながら夜を
ハカセは私の
「この公園に来るのはえらく久しぶりな気がする。前に来たのはいつだったかお覚えがない」
「前にハカセと来たのは4月ごろだよ。公園の桜を見ようってハカセが言い出したのに覚えてないの?」
ハカセは、頭の中を探りなんとか思い出そうとしているのか、目を細めて
「そうだったか?」
「そうだよ。その時もココに来たのは今ぐらいの遅い時間だったかな。桜がぱらぱら舞っていて、それを見ながらハカセは学生時代の思い出話しを語ってたよ」
ハカセは私のほうを見て笑い、驚いた表情をした。
「俺が学生時代の話をしてたのか?」
「夜中の学校のプールにお兄さんと忍び込んで遊んだとか、けっきょく後でバレてさんざんな目にあったとか、昔はやんちゃでした
私はあきれたようにその時のことをハカセに言うと、不思議そうに私を見るだけでピンときてなかった。
「そんなことを話していたのか、俺もよくしゃべるようになったもんだ。悪かったな、楽しくない話を聞かされて苦痛だったろ」
ハカセが笑いながらそう言うのを私は無表情で聞いた。
「なんで忘れちゃうかな…」
私はひょいっとブランコから飛び降り、前へと歩いて行った。公園の
「私はなんだって覚えてる。昔のこと、この町に来たときのこと、学校でのこと、友達のこと、もちろんハカセのことでもなんでも。アルバムみたいに頭の中でずっと残って、忘れようとしても消せない」
私は後ろのハカセの方は見ずに話した。
「たぶん、自分に終わりが近づいて来てることが分かってて、ココにいたんだっていう
ハカセはしばらく黙ったまま何も言ってくれなった。風が草や木の葉を
「これから病気の
私は手が
「…なぁ、まいご。昨日も話は聞いたが、家を出ていくしか選択はないのか?俺は病気のことを知ってしまったが、まいごが気にならないように前と変わらずに
ハカセはいつもと変わらぬ
「大丈夫じゃない。大丈夫じゃないんだよハカセ…」
自分でも言いたくないのに言わないといけないのが本当につらい。どうにもならない状況でも希望の言葉を言ってくれる人がいるのに、それに答えることができないのが
私の言葉を聞いたハカセは小さくため息をついた。
「…そうか。できればウチにいて
私は振り向いてハカセの顔を見た。肩を落としつかれた表情のハカセは私をまっすぐに見ていた。
「うん…よく考えてみるよ」
自分の中ではもう考えは決まり変えるつもりはなかった。でも今のハカセにそれは言えない。私のことを思って言ってくれているのを知っていたから。
「まいご、お前の話しは終わりか?もしそうなら、俺も少し話したいことがある」
私はまたブランコのほうへ
「え?終わりだけど。話ってどんな話?おもしろい?」
私はふざけてハカセに顔を近づけて言った。
「おもしろくはない」
「えー、暗い話ししたから、楽しい話が聞きたかったな」
私はわざとらしく肩を落とし、落ち込んだ姿をアピールした。
「話と言うのは俺自身の昔の話だ」
「ハカセの昔の話し?」
「あぁ、昨日まいごに話したくなかったことをしゃべらせてしまった以上、俺自身のことも話しておきたい。イヤなこともすべてな」
ハカセは暗い表情のままだけど、何かを決心をするように私に言った。
「私のことなんて気にしなくていいのに。でもハカセが昔どんな人で何をしていたかは興味あるかな。あまりくわしく聞いたことなかったし」
「少し長くなるがいいか?」
「長話し聞くのはかたりのおかげで
「そこまではいかないが」
そのときハカセの口元がゆるんだのが分かったけど、すぐにもとの表情に変わった。
「まずどこから話そうか。そうだな、最初に俺の弟のことについて話をしていこう」
それから、ハカセは弟さんやお兄さん、家族に起こった出来事をたんたんと私に話してくれた。その内容は私が想像していたものとはかけ離れていて、まるでどこか
「これで俺自身の話しはだいたい終わりだ。あまり気分のいい話しじゃなくてすまない」
ハカセは話し終わると目線を落とし、昔の苦い出来事を思い出しているようだった。
「…私が想像してた話と全然違っていて、なんて言ったらいいか。大変だったんだね…」
「もう何年も前の話しばかりだ。大変だったし傷ついたが、それも時間が解決してくれるだろう」
ハカセは
「それと、まいご。今の話を聞いて、俺が人を傷つけて
急に質問を投げかけられドキっとした。
「そ、そうだね。そこは驚いたかな」
しどろもどろで私は答えた。ハカセはどうしても人の気持ちを読み取ろうとしてしまうクセがあるみたいだ。
「やった罪はなにをしても消えない。もし罪ほろぼしという言葉があるなら、周りからそういった人間だと
ハカセは私と目をそらし前の景色見ていた。
「昔、不思議に思っていたことがあった。俺と兄貴は小さい頃、顔や
「そこから先は話さないでハカセ」
私はハカセの話しに割り込む形で言った。
「何?」
ハカセは驚き私に聞き返した。
「今言ってくれたように、やってしまったことは消えなくて、それは私が聞いても同じなんでしょ?」
「それはそうだが…、俺はまいごが知られたくなかった事実を知った。だから、それ
「じゃぁ今じゃなくて、もっと後になって話して。楽しく話せるようになってから。そんな
私はハカセの顔を指さして笑った。ハカセはその言葉が意外だったらしく言葉が出てこないでいた。
ハカセの重たい話を聞いた後なのに気持ちが軽い。話せなかったことを言えたからかな。何も解決できてないし不安も消えないままだけど、今この時だけは心が安らいでる気がする。家を出て1人になると思うと、こんなふうに誰かと話してる時間がすごく
「なら俺自身の話しはこれで終わろう。聞きたくない話を無理に聞かせるわけにもいかないしな。ただ、最後にどうしても伝えておかないといけないことがある。なぜ俺がこうまでしてまいごの病気のことを調べたかについてだ。その理由を言わせてくれ」
夜中の公園に私たち以外の人の気配はなく、ときおり遠くで車のエンジン音が聞こえるくらいだった。
「昨日話してくれてた、ねむりの件で調べる必要があったからじゃないの?」
「確かにそれもある。だが、それだけならまいごに何も言わずに調べはしなかっただろう。実は昨日話したように、まいごが今望んでいることをしてやれるかもしれないと思ったからだ。そのためにはどうしても病気のことを確認する必要があった」
いったい何の話しだろう。ねむりの件は解決したし、病気のことを知ってもハカセが病気を治せるわけでもない。それ以外に私が望んでいることってあったかな。
「私が望んでること?」
「あぁ、ねむりの件を俺に頼んだとき言っていただろ、『もう1度話したい』と」
私はハカセの言葉を聞き記憶をたどった。夜中遅くに起きて、リビングでねむりのことを初めてハカセに話したことを。そうだ、ねむりの探し物を見つけてほしいという前に、最初にハカセにお願いをしていた。でも、それはあまりにありえなくて、私も言ったことを記憶から消していた頼みごと。
「ハカセ。でも、それって」
「前置きを話させてくれ。さっき俺自身の過去の話をしたが、俺の親父や今兄貴がやっている仕事が危ない状況を
ハカセは頭を整理しながら話しているのか言葉をかみしめてる。
「だから、こらから先もまいごに話すつもりはなかった。だが状況が変わった。病気であることがわかり、何年生きていられるか分からない状態の人間にそれらを隠し通す意味がないと、俺自身の中で答えが出た」
夜風が肌をすべるように通り抜ける。心がざわついてる。私はハカセの横顔を見続け、言葉を待った。
「最後に確認をしておきたい。まいごの望みをかなえることはできるだろうが、それを知ることで危険がともなう。それでも俺の話を聞きたいと思うか?」
ハカセが私を見る。その目はどこか不安を
「なら少し語らせてもらうぞ。そう難しい話じゃないから
まずはじめに世の中の全体像を話させてもらう。
世界には多くの人たちがいるが、その一人一人に役割があり、
私は心の準備をしてハカセの話しに聞き入った。いったいどんな内容の話しなんだろう。自分自身こんなに何かを知りたいと思ったことはない。
「1つは、進みすぎている医学だ。多くの研究者によって新しい
ハカセは
「その医学や医療の進歩とは具体的にどういったものかだが、コレがその1つだ」
ハカセはシャツのポケットから何かを取出し私に見せた。それは小さくて
「この容器の中に入っている液体は人間の
私は一瞬にして、去年隣街のスクランブル交差点で血だまりに倒れていた少年の姿を思い出した。
「じゃぁ、やっぱりあのとき」
「あぁ、その少年が助かったのもコレのおかげだ。この薬品はさっきも言った人たちにしか渡されず、傷を負い命の危険を感じた時に使うように言われる」
すごい…、もう世界は想像を超えて、知らぬ間に大きく
ただ、私はハカセの薬品の説明を聞きながら心配になった。そんなに命の危機にさらされたりするんだろうか。
「…ねぇ、ハカセ。ハカセは自分にその薬品を使ったことがあるの?」
「これを?いや、あの少年に使っただけだ。これを自分に使うときには俺はこの世にいないだろう」
私はハカセが笑いながら言う怖い返しに
「そして2つ目は、負の質量とエネルギーを持つ物質が発見されていることだ」
私がぶつぶつと考え事をしているとハカセの話しは2つ目の内容へ
負の質量とエネルギー?あれ、どこかでその言葉を聞いたことがあるよな・・・。そうだ、たしか去年ハカセの部屋にこっそり入ったとき、机の上に散らばっていた資料の1枚にそんなことが書いてあった。じゃぁ、あの紙に書かれていたことが本当ってこと?とても信じられないけど…。
「この物質の発見により長年不可能だと考えられていたことの1つが可能となった。それは、たぶん俺たちが生きているうちで、これ以上にない発見となるだろう、タイムトラベルの成功だ」
ハカセの口からこんな非現実的な言葉を聞く日が来るとは思わなかった。いえ、もう現実になってる?ハカセは真剣に私に話してそうだけど、どうしてもハカセが『冗談だ』と言ってくることを
「タイムトラベルって、まさか過去や未来に行ったりできるってこと?本当なのハカセ?」
私は
「あぁ、タイムトラベルをするには理論上どしても重力に反発する負のエネルギーの物資が
私はハカセの話しに引き込まれていった。私の知らない世界ではもうおとぎ話しが現実になろうとしている。人の研究や技術の発達が
「この光と音を過去へ移送させれるようになったことで、これをある物に
理解力がない私だけど、ハカセの最後の言葉でよく分かった。私はあまりの嬉しさにハカセの二の腕のところをガっとつかんでしまった。
「痛いっ。なんだ?」
「ハカセ…、うそ。本当に?本当に電話ができるの?…ねむりと話すことができるの?」
私はハカセをつかんだ手を放し、
「そういうことだ。そんなに驚くのか?まいごが言いだしたんだろ、ねむりと話せないかと。
「あの時はもしかしてと思ったけど。落ち着いて考えるとやっぱりありえないし、まさか本当にできるなんて…」
なんだか頭がクラクラとしてくる。心臓の
「2つのおおまかな説明はこのくらいだ。何か質問はあるか?」
私は急に話を振られてハッとした。聞きたいことはたくさんあるけど、どうにか頭の中で1つにしぼりハカセに聞いた。
「この話って、たしかごく1部の人たちだけしか知らないんでしょ?ハカセはどうしてこんな話をしってるの?それともハカセのお父さんやお兄さんが知ってたの?」
「さっきも言ったように、この話は国や世界の重役の人間にしか教えられておらず、俺はもちろん兄貴もその人たちの仲間には入れてもらえていない。だが、今話した措置はどうやら親父が死んだ事件がきっかけで行われたようで、その事件に関わりがある俺たち兄弟には教えてもらえた。こういった事件が
ハカセがこのことを教えてもらえたのにも事情があるみたい。でも、ハカセが無理に誰かに聞きだしたとかではなくてホッとした。
「あと、
私はその言葉を聞き急に不安になる。まだ何かあるのだろうか。
「そんな不安な顔をしないでくれ。ねむりとは必ず話せる。ただ、この過去への電話には話せる回数と時間に
「制限?」
「あぁ、この電話で過去の人間と話すというのは過去へ
1つは通話時間の制限だ。電話の相手によっては世界の歴史を変えられるものだが、そうするためには顔の見えない相手にこちらが未来から電話を掛けていることを説明し信じさせなければならず、そのうえで
もう1つは電話できる回数の制限だ。同じ相手と何度も話されてしまった場合、1つ目の通話時間の制限が意味を無くす。そのため、電話をかけることができるのは1回だけだ。同じ相手に2度電話することは出来ない。
つまり、この電話の存在をしっており、なおかつ命の危機を回避する要件だと知っている相手にしか
ハカセの説明を聞いてとてもショックだった。ねむりと1度しか話せないなんて…。気持ちが沈んでくる。でも普通は亡くなった友人と話すことなてできなかったはず。それを考えると、本当に素晴らしいこと。数分だけだっていい、ねむりの声さえ聞ければ。
「あと、これは兄貴から聞いた話だが、この電話を使ってまいごと同じように亡くなった家族や友人に電話した人も何人かいる」
私は目を大きくさせた。
「話せたの?」
そう聞くとハカセはうなずいた。
「ちゃんと話せたさ。ただ、亡くなった人間と直接会話をするというのは、どうやら距離が近づきすぎるようだ。人は誰だって亡くなると悲しいものだが、時間とともにその悲しさも
「する!するする。もちろんそういった
私は手をにぎりしめて、力説するようにハカセに向かって言った。ハカセはそんな私を見て、どこか納得してくれたような表情をした。わたしの決心が固いのが伝わったのかもしれない。
「そうか、分かった。ならねむりに電話をする日にちを決めてくれ。いつねむりに電話をしたい?悪いが普通の携帯電話ではねむりに電話をすることはできない。日が決まったら教えてくれ。電話の仕方なんかの続きはそのとき話そう」
いつ?私はそういったことはまるで考えていないかった。それっていつでもねむりに電話を掛けられるってこと?そんな、電話をする日にちなんて決まってるじゃない。私は公園から立ち去ろうとするハカセの服を引っ張った。
「ハカセ、今日電話したい」
当然だけど、ハカセは振り向き驚いていた。
「今日って…、今から電話をするのか?」
「ねむりが亡くなって、最後にねむりと話せなかったことをずっと後悔してた。私もいつ死ぬか分からないのに、もう1秒だって待てないよハカセ」
私は今どんな表情なんだろう。たまっていた思いのせいで、感情をハカセにぶつけるように言ってしまっていた。ホント私はハカセやみんなに迷惑をかけてばかりだ。
「今日はダメ?」
私はハカセの顔をのぞきこんだ。
「…ごめん、ねむりと話せると思うと気が
私は
「いや、電話をすることはいつでもできる。だが、今日でいいんだな?電話を1度でもしたらもう話せない。伝え忘れがあっても2度と話すことはできない」
ハカセはケータイ電話の画面を見ながら私に話した。
「うん、大丈夫。ねむりに、本当に伝えたいことなんて1つだけだから。言うことはちゃんと決まってるから心配しないで」
ねむりと話せると思うだけで声も元気になっていってることが自分でも分かった。まるでねむりは私の体の1部分のように、今でも思い出として生き続けてる。やっぱり私にとってねむりは変わりなんているはずのない親友なんだろう。
「過去への電話だが、最初にさっき話したタイムトラベルのための装置がある研究施設に電気が送られ、送られた電気は現在から過去の
私はハカセがせかせかと指を動かしているケータイ電話の画面を見た。なにやら地図のようなものにいくつもの赤いしるしがつけてある。ハカセが自分でつけたしるしなのかな?
「県内にある公衆電話の数は6000あまり、ケータイ電話の
ハカセがケータイの画面を私に見せてくれた。どうやら地図に
「ここはバブル期に多くのログハウスの
いや…、ほんとにハカセがいると心強い。ここまで調べてくれてたなんて。この1件が終わったら、なにかハカセにお礼をしないと。でも、とばりやまって聞いたことがないかも、ハカセは県内にあるみたいなこと言ってたけど。
「とばりやまって聞いたことがないけど、県のどこにある山なの?」
「ここから南に下り、ちょうど
「
私はまさか電話をするだけなのにそんな大変なことだとは思わず、今日電話をしたいとお願いしたことを後悔した。
「どうって俺の車だ。まさか電車やバスを乗り継いで行く気なのか?さすがにそれだと着くのは明日の朝だ。車なら1時間と少しで着くはずだ」
くるま。そうだ、ハカセが車を持っていることをすっかり忘れていた。お店の買い出しなんかも歩いてすぐのところにスーパーがあるし、ほとんど使わないから私の頭のなかで存在が消えてしまっていた。たしか黒塗りの古い感じの車だったような気がする。店の
「ただ、少し話しすぎたようだ、夜もかなり遅くなっている。準備ができ
ハカセは公園の出口へと歩きだし、私はその後を
死人と話せる電話ボックス aki @aki01751124
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