AGL.07
第3分隊の4機は第11分校へと帰投してきた。すると、上空で警戒に当たっていたE-767MZ アマノサグメから新たな指示が出た。
〔グレースワッチからセクメトサードスクワッド、燃料残量はどれぐらいか?〕
〔セクメト25からグレースワッチ、1時間のCAPなら出来るくらいね〕
〔了解した。現在、テティス隊が対艦攻撃の為に離陸中だ。貴隊はテティス隊の護衛(エスコート)を行え。以後は第11分校分校生徒会の指示に従え〕
〔25、ウィルコ。さて、行くわよ〕
第11分校 戦術航空科 3年 665組、第665戦術攻撃飛行隊(665TAS)、コールサイン・テティス。敷島学園で一番の対艦攻撃能力を有する飛行隊である。8機の対潜哨戒爆撃機・Су-34ФН ウトコノースを中心に、F-2A バイパーゼロ、F/A-18E スーパーホーネット、殱-15 飛鮫、タイフーンFGR.4、F-15E ストライクイーグル、殱轟-7A 飛豹、トーネードIDS、電子支援用のEA-18G グロウラーで編成され、対艦攻撃、防空網制圧、近接航空支援を専門としている。
そんな飛行隊の20機は空対艦ミサイルをフル装備し、編隊飛行する。そこへ、セクメト隊の4機が合流する。
〔こちらセクメト25。テティスリーダー、貴隊の直援を行います〕
〔テティス27からセクメト25、よろしく頼む。こちらはASM(空対艦ミサイル)を満載しているからな、敵戦闘機に襲われたらひとたまりもない。そもそも、ここにいる全員が空対空が苦手だからな〕
〔セクメト25、ウィルコ。全力でお守りします〕
そこへ、第11分校生徒会から指示が下った。
〔パンテオンコントロールからテティス隊。512水戦は方位(ベクター)070だ。高度3000をキープ〕
〔正気か? そんな高いと見つかっちまう。奇襲の意味が無くなる〕
〔テティスリーダー、これは命令だ。高度3000をキープしろ〕
〔……テティス27、コピー。方位070、ヘッドオン〕
その時、早期警戒管制機から緊急連絡が届く。
〔グレースワッチからセクメトサードスクワッド! アラートだ! 方位170より不明機(アンノウン)、数8、ホット(まっすぐ向かってくる)、高高度、速度900!〕
〔セクメト25、コピー! インターセプトに向かう! ターンヘディング、170〕
〔36、ウィルコ〕
「12、コピー」
〔57、ウィルコ〕
4機は旋回し、迎撃に向かう。
〔こちらは早期警戒機(AEW)サンダーヘッド。ウォードッグ、ゴーレム各隊に告ぐ。今回は戦力判定だ。相手は24機、だが護衛機は4機らしい〕
〔ゴーレム1、ウィルコ〕
〔ウォードッグ3、コピー。悪いな、うちの隊長は無口でな。しっかし、相手は4機か〕
〔チョッパー、俺の台詞を奪うな〕
〔そうだぞ、クリーブランド。お喋りも大概にしろ〕
〔へいへい、お堅い頭は結局2年間変わらなかったな〕
〔貴様の口も減らなかったな〕
〔冗談もここまでよ。ウォードッグ2、レーダーコンタクト。レイガン(不明機をロックオン)〕
4機の受動警戒装置が警報を鳴らす。
〔スパイク(ロックオンされる)、12オクロック(正面)、F-14よ!〕
F-15H スラムイーグルのWSOのタム チェファが知らせる。
〔トム猫!? トム猫が8とかやばくない!? 全機ブレイク! のろのろしてたらフェニックスが飛んでくるわよ!〕
美希が叫ぶ。それを聞き、4機は散開、F-15MZ イーグルとF-15H スラムイーグルは増槽を投棄する。同時に、チャフを散布して電波虚像を作り出す。
〔レイガンコールから4秒で散開……大した連中ね〕
〔ほぉう、やるじゃねぇか。ブレイクと言っても編隊から離れない何処かの新米ちゃんとは大違いだ〕
〔アルド、半年前の話を出さないで〕
そして、4機のF/A-18E スーパーホーネットはAIM-120C アムラーム視程距離外空対空ミサイルを発射する。
〔フォックススリー、フォックススリー!〕
〔ゴーレム2、フォックススリー!〕
4機は急旋回、飛んでくるAIM-120C アムラーム視程距離外空対空ミサイルを回避する。
〔ミサイル! ミサイル! 回避した!?〕
〔恐らくね! ミサイルを撃ってきたのはF/A-18、直前でレーダーを起動してきた!〕
「F-14は索敵役(ハンター)、F/A-18はアムラームでの攻撃役(キラー)ってところでしょ」
〔よく冷静でいられるわね! ボギー、インサイト、数8!〕
そして、4機と8機はすれ違う。
真子は、すれ違うF-14D スーパートムキャットを見上げる。全体は灰色だが、機首に薄く灰色の線が引かれ、垂直尾翼は少し濃い灰色に、見にくくも髑髏マークが描かれていた。
「ロービジ(低視認性)のジョリーロジャーズ塗装のトムキャット、どこか分かる?」
〔イクサチランNM(ネイビー&マリーン)学園 第7機動艦隊 第7空母航空団 第108戦闘飛行隊(VF-108)、コールサイン・ウォードッグだな〕
〔さっすがディミー、よく知って――ってウォードッグ!? イクサチランNMのエース部隊じゃん!〕
ジーナが取り乱す。
〔『悪魔のイナンナ』……相手が悪過ぎる!〕
〔わぁぁぁぁぁ! もう無理ぃぃぃぃ!〕
Su-30MKB ストライクフランカーの後ろに、いつの間にか2機のF/A-18E スーパーホーネットが食らいついていた。
「ジーナ、チェック6(後方警戒)、チェック6! フレア! 左へ切り返せ!」
後ろを見るディミトリーがそう叫ぶ。ジーナは操縦桿を左へと倒し、機体を反転させて左急旋回、同時にエアロブレーキを展開させて減速させる。しかし、F/A-18E スーパーホーネットはハイヨーヨーでSu-30MKB ストライクフランカーの後ろから離れない。
〔ジーナ! ミサイル接近! フレア、フレア!〕
美希の警告で、ジーナはフレアを撒く。
「ディミー、ミサイルは!?」
「分からない! フレア出し続けろ! あと敵機も見失った!」
「美希、何処!?」
〔バッチリよ! 25、フォックスツー!〕
F-15H スラムイーグルの右主翼から、1発のAAM-5短距離空対空ミサイルが発射される。
群青の高空 神奈内かんな @fox3
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