SNSが繋がらない日

大月クマ

オフラインモード

 朝から、SNSが繋がらない。

 なんでだろう?

 そういえば、昨日の夜にSNSに流れていた一枚の写真以来、開けていないのだけれど……。


 しかし、妙な写真だった。


『世界の終わりwwwwwww』


 と、コメントされていた。

 雲ひとつない真っ青な空、その片隅には薄青い月が写っている。

 不思議なのは、その真ん中に明るく光る星。


(昼間に明るく光る星? UFO!?)


 誰かが、そのUFO写真をSNSに投稿した。

 その時は、そう思った。


(くだらない……誰かが作ったコラじゃない?)


 そういうことは信じない主義だ。


 しかし、考えてみればそれ以来、SNSは繋がっていないようだ。

 しかも、スマホもウンともスンとも言わない。

 なので、久しぶりに朝からテレビを付けた。


『インターネットの接続が昨晩から出来ない状態が続いています。

 各地で混乱を来している模様ですが、目下のところ復旧のめどは立っておりません。

 原因は調査中とのことです。

 続きまして……』


テレビは生きているようだが、結局、情報が不足しているではないか。

 やはり、インターネットやSNSの方が情報は早いし正確だ。


 しかし、どうしたものか。

 学校は休んでしまおうか……でも、スマホは繋がらない。学校に連絡しようがない。


(無断欠席だなんて思われたらヤだ……)


 いつものように身支度して、駅に向かうことにした。

 だが、駅に着いた早々、混乱していた。


『只今、設備故障のため電車が遅れております。復旧までお待ちください』


 なんでも電車が動いていないらしい。

 そこらにいる人の話を聞いていると……駅間の連絡か何かで、インターネットを使っているとか。

 そのため、電車が安全に動かせないらしく、止まっているとのこと……。


(どうしようか……)


 どこもかしこも、インターネットだ。

 SNSだってそうだ。

 ネットが繋がっていなければ、何も出来ない世の中になってしまったようだ。

 考えている暇は……ああ、公衆電話があったはず。

 駅だからそれぐらいあるだろう。

 使ったことがないけれど、記憶を頼りに公衆電話がある場所に来てみれば……ヒドく並んでいた。


(スマホもまともに使えないのだから、みんな考える事は同じか……)


 学校の皆勤賞を狙っているわけではないが、休むのはシャクだな……。

 とはいっても、駅から歩くのは……。


(――もう諦めて帰ろう)


 ウチに帰ることを決めた。

 ても、一体どうなっているのだろう。

 SNSどころか、インターネットも使えないなんて……。


『実は昨日、SNS上に気になる写真が上がっていたんですよ』


 ウチについて、やることもない。

 スマホが繋がらないからゲームもやることも出来ず、かといって、パソコンのゲームもインターネットが死んでいるので出来ない。

 据え置きゲームもないので、ボーッとテレビをつけて観るしかない。


『インターネットが使えなくなる寸前、SNSである写真が広まったのですが……。

 その途端、世界中で一斉に使えなくなったんですよ。インターネットが。

 それが、この写真です。

 どうですか皆さん! おわかりになりますか?』


 情報番組のキャスターが、そう言って見せたパネル。

 雲ひとつない真っ青な空、その真ん中に明るく光る星……あの昨日のSNSに流れていた一枚の写真だ。


(それが何の関係があるんだ?)


 情報番組のキャスターは言う。


『これが世界中に流れた途端、インターネットがシステムダウンしたそうです。

 では、ここでゲストコメンテーターをご紹介しましょう。

 超常現象研究家の――』


 と、紹介されたのは、胡散臭いサングラスをかけた男だ。


『大学教授でいらっしゃいます――』


 それと、黒縁メガネのモジャモジャの学者。


『これは紛れもなく、UFOですよ!

 SNSが使えなくなったのは、きっとインターネットを遮断して情報がこれ以上漏れないようにする為の陰謀ですよ!』


 最初に発言したのは、サングラスの男だ。


『何が陰謀だ。誰の陰謀か!

 そもそもUFOなんていない。君たちの妄想で話さないでほしい!』


 学者は反論をする。


『では、あの光は何でしょう?』


 キャスターの問いに、


『UFOに間違いない!』

『CG、単なるイタズラですよ!』


 ふたりの話はかみ合っていない。

 結局、平行線のままふたりの専門家の話は……話し合いと言うよりも、口げんかになり始めた。


(まあ、どうでもいいからSNSが復旧しないか?)


 手元のスマホのアプリはオフラインのままだ。

 テレビのチャンネルを変えても、同じような情報番組をしている。

 ああ、国営放送は……なんか、カンボウチョウカン(?)か誰かが記者会見をやるらしい。

 まだ始まっていないようで、誰もいない机が映ったままだ。


(どうでもいいか……)


 再びチャンネルを戻したが、まだあのふたりの言い争いを垂れ流している。


(つまらない。ホントどうでもいい……。

 これで視聴率が取れると思っているのだから、ホント考えてほしい)


 スマホのパネルをとりあえず、タッチしてみた……が、変わるわけではない。

 相変わらず、オフラインのままだ。

 情報はテレビぐらいしかないが……たいしたことを流していない。


『えっ? あっ! はいッ!

 とっ、討論の最中ですが……』


 突然、キャスターが慌て始めた。


(討論なんてしていたか? 子供の口げんかじゃ……)


 急に画面が変わった。テレビ局の外の映像に変わったようだ。


『こっ、こちら――テレビの屋上の――です。

 ボクより、あっち撮してッ!』


 ヘルメットを被った別のキャスターが映ったが、すぐに空を指さした。

 カメラもその指を追いかけて、空に切り替わる。


(なっ、何だ!?)


 そこに映り出されたのは、火の玉?

 いや、どう説明していいのか……あるとすれば、昔見た映画のワンシーンだ。

 あの、隕石が落ちる映画――。


(CG……これ?)


 巨大な火の玉が、空から落ちてきてくる瞬間だった。

 大きさなんて……比較する物がないから、分からない。


 ともかく、空から落ちてきたを追いかけて、カメラが移動し……ついには、街中に落ちた。


「へッ?」


 落下した街が、大爆発を起こした。

 キノコ雲が上がり、衝撃波が見える。

 画面が尋常じゃない揺れをして、空を撮したまま止まってしまった。

 カメラマンは……衝撃波を食らって、ひっくり返ったのかもしれない。


 それよりも、空にはさらに巨大な火の玉が見えるではないか!


『――さん! 大丈夫ですか!』


 再び、スタジオに戻ったが……


(いやいや、大丈夫じゃないだろ……)


 口げんかしていたも唖然としている。

 それでもスタジオのキャスターは繋げようとしているようだ。


『とっ、とんでもないことになってしまいました!

 えっ? あっ! はい! 政府より、緊急記者会見があるそうです』


 と、先程変えた国営放送と同じ画面が映った。

 エラそうなおじさんが映っている。だが、目が泳いでいる。


『こっ、国民のみ……皆様に、もっ申し上げます』


 何かに恐れているのか、声が震えていた。

 普通は呑まないだろう机に置かれた水を一気に飲み干した。


『国民の皆様には、大変の、大変の、ご苦労がこれから起きようとしています。

 アメリカの情報機関並びに、わっ我が国の宇宙開発団が、確認したとによりますと……。

 直径数十キロに及びます大型の小惑星が、地球に衝突する見込みで――』


(何を、このオッサンは言っている?)

 

『先日から、つっ続いておりました、インターネットの接続は混乱を避けるためでした。

 このクラスの小惑星が、らっ落下しますと、地球規模での災害が――』


(はッ1? SNSの写真の『世界の終わりwwwwwww』って……)


『国民のみなさ――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

SNSが繋がらない日 大月クマ @smurakam1978

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ