第60話
「うわ〜、美味しそう!」
「昼間は豪華なコース料理でしたから、夜はむしろ安く美味しく食べた方がいいんじゃないかと思いまして」
香港に来て度肝を抜かれたのは、夜の方が活気があることだ。
基本的にガルシア含めた西洋では、当然昼の方が人口も多いし賑わっている。
香港はむしろその反対で、日中はかなり暑い分涼しくなる夜の方が人口が多い。
その一例が
派手な柄の服や靴を物色する貧しそうな学生から、酒を片手に談笑する裕福な商人まで、多種多様なのは本当に香港ならでは。
そもそも階級や職業によって住む場所が分けられ、貴族の台頭するガルシアでは考えられない光景だった。
しかも面白いことに、商品には全て値札がついてないのだ。
値段はお客が交渉して決めるというシステムらしい。
「香港の商人に舌と金で勝てる者はいないのは当たり前ですよ。だって鍛えられてますから」とのことだ。
そして僕と
小料理屋で、俊杰が久しぶりに証人として金の交渉の訓練をしたいのと、僕もあまり高い料理だと気を使うのでここになった。
「お待たせヨ、
あと香港ではほぼ西洋語が通じるのも僕ら外国人としてはありがたい。
「お客さん外国から来たね?水餃米粉はまあ一度食べたら忘れられないよ!覚悟しな!」
豪快に笑って店員のオバサンが去っていく。少食な僕のお腹がグー、と鳴った。
口に運ぶ。咀嚼。…んっ、美味しい!
タケノコや小エビが入った、プリプリした食感の蒸し餃子はもちもち。
それがビーフンという麺の上に乗ってるんだけど、相性はもちろん抜群。
あっさりしてて食べやすいし、お酒にも当然合う。俊杰はニヤニヤしながら僕を眺めている。
次に来たのは
甘辛いタレは全然飽きないし、柔らかい豚肉はパリパリだし、なんていうか…
「天国?」
「天国ですよ?」
舌の上が天国。
学院時代に東洋に留学に行っては太って帰ってきた友人の気持ちがよくわかる。
「何店かはしごしたいのでお会計にしましょう」
俊杰がそう言ってなにやらニヤリと笑う。それからのお会計はすごかった。
早口の東洋語で何やら話す俊杰、身振り手振りでNOを表すオバサン。
国で表彰されるほどの大商人が屋台のオバサンに押されているのを見るのは圧巻だ。
それから舌戦をかさね、銅貨8枚で会計は終わった。でも金貨100枚の価値はある味だったと思う。
「んー、久しぶりに舌を使いましたね。僕が普段している取引は根回しが可能ですが、これはシンプルな戦いですから。
この屋台、口の立たない人はぼったくられますね」
「うん、でもぼったくられてもいい店だと思うよ、ここは」
僕の舌にはまだ焗猪扒飯の味わいが残っている。いつかセレナとも来たいな。
…多分2人だったらぼったくられるけど。
僕の教え子たちが出世しすぎて大賢者扱いされてる件について。 あやなつ。 @aya_nuts
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕の教え子たちが出世しすぎて大賢者扱いされてる件について。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます