第12話子供たちに


「それは簡単なことだよ、彼女達を「ふるい」にかければよいことだ。とても優秀なふるいを君は持っているじゃないか」


「ふるい? 何のことだい? 」


私は困り果ててカラス氏に相談していた。


「わからないかい? あの花畑さ、あそこに君と一緒に行ってくれる女性を生涯の相手とすべきだ、何故なら、あそこに行くことこそ、君のすべてを語ってくれるのだから」


「ああ・・・だが、行ってくれるだろうか? 」


「行かない、もしくは途中で怒って帰るようなものは捨ておいた方が良いのだ。感情のコントロールもできず、人を尊敬するという頭の良さも全くないということの表れだ。

君が地道にやり続けてきたことが、あのレースの勝利だったと深く感じ取ってくれる女性こそが、君にはふさわしい。

我々だって、君には幸せになって欲しい。君の子供が良い資質を持つのはわかるが、その片方が悪いではどうしようもない。

君の子供を「食べない」と言った我々の気持ちも汲んでくれないかな? 母親からほっておかれ、いかにも礼儀も、身のこなしも教えられていないという愚かな子が生き残り、のさばって、

「僕の父親はウサギを倒した」などと大声で言ったなら、それは我々にとって、君の子が「あのウサギになった」のと同じことだ、違うかな? 」


「それはそうだ、ありがとう、カラス氏、皆さんにもよろしく伝えてほしい」


「では、良い報告を待っているよ、まあ、空から見ればわかることだがね」

そう言って飛んで行ってしまった。


 それから私が言われたように計画を実行すると、これも言われたように、すぐさま機嫌を損ねるもの、途中で怒って帰るものだらけで、結局は多くの女性が、ほんの少しだけ芽生えていた私の愛情の芽を自分で踏みつけてしまい、二度とそこから命が生まれることはなかった。

 そうして、たった一人だけ、私とゆっくりと歩きながら話を聞いてくれた人を、私は生涯の相手として選んだ。

そうして二人何度か森を歩いていると、高い所を鷹を飛んでいたり、一度

「ワオーン」と遠吠えがした。

彼女は「狼だ」と怖がっていたが、


「大丈夫だよ、あれはきっと私たちを襲うような声ではないから、何か、喜ばしいことが狼にもあったのだろう、今の私たちと同じように」

とにこやかに言った。


 



 あれから時が経ち、私の子たちは、確かに他のカメたちの子供より数多く生き残っている。それはやはりあのレースの勝者の子供で、優れた素質を持っているからだと他の者は言ったが、私はこのことを完全に否定している。

大きくなると子供はレースの話を聞きたがり、私もその時どんなにきつい思いをしたかということ、そしてもちろん花畑に行っていたことも話して聞かせる。


「負けた後、ウサギはどうなったの? 」子供はいつも聞くが


「さあ、若いキツネに食べられたとも、人間の家に住みついて、餌をもらうようになったとも言われている。二度と、ここには帰ってくることはなかったのだよ」


これは私も聞いた話だ。食べられたのなら、血の付いた毛皮がどこかにあるはずだが、それを見たものはいないため、私は後者の可能性が高いと思っている。だが、このことはそう重要ではない。


そうして必ず話の最後にはこう言うことにしている。


「たとえ独りぼっちでも、自分がやろうと、正しいと思ったことは貫き通さなければいけないよ。周りから変な目で見られても、それを気にしてはだめだ。真面目に、コツコツやって、積み上げていることを見ていてくれる人は、案外そばではなくて、遠くにいる場合だってある。

 諦めないで、意志を持って続けることだ。そうすれば最後には自分の周りは完全なまでに丸く収まる。


あの、美しいフクロウの目のように」





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小恐怖 ウサギと亀 イソップ寓話より @nakamichiko

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