微炭酸
よる
No.1
きっと少年よりはうまくやっていたはずだ。
私の後ろでおばさんが小学2年生くらいの少年に話しかけた。
「今日はプールだったの?」
「うん」
「冷たかった?」
「なに?」
「冷たかった?」
「ううん」
少年はぶっきらぼうに言い放った。
私が少年ぐらいの歳の時はもっと賢かったはずだ。いい子だと思われるように、にこにこにこにこして、たまに弱い部分をみせて、ぶっきらぼうになんか絶対答えなかった。
でも少年は将来、大きくなって沢山のことを学んで、ぶっきらぼうじゃなく、丁寧に昔の私みたいに聞かれたことに対し答えるようになるだろう。今の私とは裏腹に。
少年が汗をかく姿を見て、自分も気づいていなかったはずの暑さを感じ、鞄の中からそれをとりだした。
一口口に含む。
なんでか、飲み込めなくて。
でも飲み込まないと全てを吐き出してしまいそうだった。全てを。私の中の全てを。
口の中で弾けるそれはまるで私の中の少年への憧れのよう。
信号が変わった。
私はそれを全身にまわし、走り出した。
微炭酸 よる @September_star
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