終幕

 西部バイコーン騒乱を起こした二人についてお聞かせください。


「ああ、あいつらの話か。残念でもなく当然の結果だね」


 当然、ですか……手厳しいですね。

 彼らの評判は、冒険家の間ではどうだったのですか?


「最悪だよ。関わると面倒くさいって、悪名が轟いていたコンビだからね。

 ずる賢くて、自分勝手で、周りからいろいろと恨みを買っていたから、必要以上に用心深いやつらだったよ」


 その用心深さが、バイコーン討伐に繋がったのでしょうか。


「それは違うと思う。

 最後、あいつらは……なんだかんだで仲間のために戦ってたよ。

 そう……ガムシャラにね」


 しかし、憲兵に捕まって投獄されてしまいました。


「だから、それは当然だよ。

 おたくらが取材している騒乱の元凶なんだから」


 彼らもそうですが、あなたもバイコーン討伐に貢献したんですよね?


「……まぁね。

 世間に名前は知られてないけど、命がけで貢献してくれた仲間は他にもいるよ」


 話は変わりますが……。

 魔物のバイコーンが、実はユニコーンの正体だったという噂で都は持ち切りですが、これは事実なのでしょうか。


「事実も何も……。

 角の生えた白い馬がユニコーンってんなら、そういうことになるんじゃない」


 しかし、バイコーンは南で大暴れして帝国から討伐対象とされた魔物です。

 そんな魔物が、どうして伝承通りのユニコーンの姿をしていたのでしょう?


「そんなの、あたしが知りたいよ!

 ……賢いやつだったからね。人間から隠れる時にはユニコーンの姿を、人間を殺す時にはバイコーンの姿を、使い分けていたのかもね」


 都の少女達が嘆いていましたよ。

 ユニコーンの正体が化け物だったことと、何よりも憧れの存在が殺されてしまったことに。


「そんなこと言われてもねぇ……。

 アレを生かしておいたら、もっと被害は拡大していたよ」


 近々、枢機卿より勲章の授与があるとのことですが、叙勲者はあなたと機動憲兵隊の方々ですか?


「例の二人も叙勲の対象だよ。

 ブタ箱に入れられてるのに、そんなの貰っても恰好がつかないだろうけどね」


 この騒動は、元々彼らがユニコーン捕獲計画を立てたことが発端だと言われていますが、何のためにユニコーンを捕まえようとしたんですか?


「ああ、それね。

 ずっとはぐらかされてたんだけど、逮捕される時にようやく教えてもらったよ」


 闇市でひと儲けするつもりだったとか?

 それとも、どこかの富豪に売り飛ばすつもりで?


「ははは、闇市で売っぱらうとは言っていたけど、あいつらの本当の目的はそんなことじゃなかったよ」


 本当の目的、ですか……。


「アドベンチャーズ・ユニオンの酒場に、セシリアって看板娘がいるんだけどね。

 あいつら、彼女が処女かどうかを確かめるために、ユニコーンを捕まえようとしたんだよ」


 ……はぁ。処女を確かめるため、と言いますと?


「処女かどうかなんて、本人に聞くのははばかられるだろう。

 だからあいつら、ユニコーンの背中にセシリアが乗れるかどうかで、処女かどうかを判断しようとしたのさ」


 ……え、本当にそれが理由?


「頭おかしいよね。馬鹿だよ、馬鹿」


 ユニコーンに非処女を乗せた、という話も聞き及んでいるのですが……それも何か関係があるのですか?


「処女が乗った時と、非処女が乗った時の、反応の違いを知りたかったって。

 セシリアを乗せる時に処女かどうかの判断材料にするつもりだったんだろうね」


 ……それは……たしかに、馬鹿ですね。


「そんなことのために、あんな騒動を引き起こしちまって……。

 まぁ、あたしも当事者なんだけどさ」


 彼らはすでに副都の監獄に収容されていますが、釈放はいつ頃か聞いていますか?


「さぁねぇ。犠牲者の数も半端ないからね。

 でも、帝国が追っていた魔物の討伐に貢献したんだから、二、三年くらいで出てこれるんじゃない」


 たしかに恩赦が出ても不思議ではない程の怪物でしたしね。

 彼らが出てきたら、どうしますか?


「お勤めご苦労さん、ってワインでも持ってってやるかな」


 ところで、そのセシリアという女性……結局のところ……。


「結局、セシリアは処女だったのかって?」


 失礼ながら、気になって仕方ありません。

 何せ、あのお二人が命まで賭けて探ろうとした秘密ですから。


「女にそんなこと聞くなんて、野暮だよ。

 そういうのは、男が勝手に想像してりゃいいさ――」




「――だって、その方が好奇心が湧くじゃないか」







――終劇――

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ユニコーンに非処女を乗せたらどうなるのか試してみた R・S・ムスカリ @RNS_SZTK

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