からくり時計の向こうで踊る君
姫亜樹(きあき)
からくり時計の向こうで踊る君
クリスマス前のある日
ぼくらはプレゼントを買いに
町のアンティークショップへ行った
古い雑貨で埋もれた店内で
動く古びたテレビの中に
君を見つけた
夏色のからくり時計の
向こう側で君は
虹色の不思議な生き物たちと
楽しそうに踊っていた
それは一瞬の出会い
クリスマス前に降った奇跡
古びたテレビは
二度と君を映すことは
なかったけど
君はぼくらの心に住みつき
ぼくらの心を遠く海の都市へと揺さぶる
「彼女を探しに行こう」
ぼくらは同じことを考え
大人になる前に
冒険に出ることにした
たぶん長い旅になるだろう
ぼくらは夏を待つことにした
深い雪に沈む冬を乗り越えて
遅い春を迎え
ぼくらの心が騒ぎだす
学期末テストが終わり
待ちに待った夏がやってきた
ぼくらは星の輝く夜
コッペパンとソーセージ
トライアングルの牛乳パック
少しの服と希望を
カバンに詰め込んで
家を飛び出した
少し古びた夜行列車に乗り
緑の牧草地を抜け
小さな町々を過ぎ
朝日を浴びる海の都市へ
からくり時計の向こうで踊る
君を探しに
からくり時計の向こうで踊る君 姫亜樹(きあき) @Bungo-2432Da
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