煩悩の果て

煩悩の果て

　彼女はサキュバス。

　すこぶる美人で、イきやすい。

　しかもイくたびに死んでしまう。

　そしてすぐに息を吹き返す。

　今年で齢6000歳だそうで、サキュバスにしては、憂いを帯び、しめやかで、どこか透明だ。

　よく人生相談にも乗ってもらい、この前、絆されて交わってしまい、12回も殺してしまった。

　すぐに彼女は許してくれた。

　よしよしと慰めてくれさえもした。

　彼女は酒もタバコもギャンブルもやらず、暇な時は私をただぼんやり眺めている。

　サキュバスの生に疲れているわけでも、ほうけているわけでもない。

　これは彼女なりの見守りかたなのだ。

　そのうち女神様にでもなるかもね、と冗談めかしてもいたが、どうやら常日頃上からお誘いがあるようで、当たり前のように断っている彼女を、私はとても愛している。

　彼女にとっては一通過点ではあるけれど、知り合えたことがこの上なく幸せなのだ。

　愛しのきみよ、サキュバスでいてくれて、ほんとうにありがとう。