ベーシックインカムで明るい世界・・・人まねー僕が僕である様に君が君であるように

猫3☆works リスッポ

第1話 終わり無き世の悲しさよ


平日の真昼間だと言うのに大通りには大声で抗議を叫ぶ群衆が溢れている、あちこちの街角の商店のシャッターに石がぶつけられ、ガラスの割れた音とそれを踏み砕く音、そして警報器が大音響を発した、その警報器の音の元に向かって群衆をなぎ倒し掻き分けパトカーが突き進む、警官が警棒と放水車で暴動を蹴散らそうとして奮戦していた。

このところ町では暴動が増えていた、そうしてこんな風景は実は日本の各地で同じ様な騒動が起きているのだ。

その時カーテンの隙間から外を見ていると。


「渋谷くん今月の食費まだある?」

ルームメイトのアポル4世が小声でそっと聞いてくる、そことなく俺の自尊心に気を使っているのがわかる。

「君にも分かるかい、そろそろ無くなる、だけどいつも君にばかり迷惑をかけられないよ。」

「シブの給料日は10日後だっけ?」

「そうだよ、派遣先の給料日までは後10日、国民厚生給付日までは3日」

これは昔で言う生活保護を全国民が受けられるように改正したものだけど、支給額は両方合わせても1ヶ月食べるには足りないくらいだ、俺はいつもこのくらいの時期にはこいつに飯代を借りている、でもそろそろ、そんなみっともない事は止めようと今回は3日間程度の断食をする気でいた。

アポル、こいつは人間じゃない、人マネと呼ばれるロボットだった、俺はそいつに金を借りるなんて、最初のうちはプライドを持ってそう思っていたが二年も同じことを繰り返すうちに最近は気にならなくなっていた。

人マネは人間と同じ様に働き消費する、そう作られている、名前の4世と言うのは4世代目という事だった。

自律思考AIって感情があるのかね

まあ人のことはどうでもいい、暴動は労働力不足だと言われて20年経つが今だに労働力が不足し何故か失業者が溢れているのが悪いんだ。そういう俺も派遣の仕事をしている、まあ正社員なんて何十年も前に絶滅した人種だからな。警官だって派遣だし公務員や自衛官だって今は派遣社員となっている。


なんと選挙もなくなって総理大臣も派遣だ

世界には失業者が溢れていた、人まねは最初の目的から離れて世界の富の80%を持っていたが大量消費と設計されていたために、貧乏だった、人間を助ける充分な余裕は無かった。

労働者不足なのは変わらないのに穴埋めは人まねを使うから今に至るまで失業率は改善されなかった。

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