お笑い×妖魔退治──新手の組み合わせに、まずひとつうずうず。
劇場お笑い芸人の従兄に憧れている明人は、ある夜謎の黒い『感情の集合体』に遭遇。
気持ち悪くて吐き気がして、そんな折に割って入って助けてくれたのがサンディーちゃん。
サンディーちゃんはボケ気質のズレたツッコミをかますので、目と耳とツッコミ能力が研ぎ澄まされている明人に、清々しいほどノリツッコミで返されることに。
まさか。
それが。
妖魔を霧散させるほど滅することになるなんて!
要所要所に筆者・チョビさんの漫才ネタが折り込まれています。
唸れる読者、きっとあなたもクスッと笑てまいますよ。
登場人物みんながそれぞれに悲しみとか業を背負っていて、魅力に満ちています。
はたして明人とサンディーちゃんは、『情魔』と謎の魔の影を、笑いで吹っ飛ばすことができるのか──?!
「なにがあったか、うちらに教えてや!」
サンディーちゃんのその言葉、読了すれば作中で一番優しいと思えるはずです。
一見不釣り合いな、お笑いと魔物(本作では情魔と呼ばれる)退治という冒険活劇を見事に融合させた作品。
その他にも、新たな仲間との出会い、大切な人との別れ、各人が抱える葛藤や悩みといったいくつもの要素を情感たっぷりに描いている。
作者のほかの作品にも共通して言えることだが、ストーリーの中にその世界観に引き込むのに有効な助走があり、読む手が止まらなくなる山場・見せ場があり、そして何と言っても最後は爽快感溢れるエンディングが待っている。実にエンターテイメント性に満ち、完成度の高い作品。
お笑い業界のゴタゴタが取りざたされる昨今にあって、「お笑いの力」を再認識させてくれる作品。ぜひ一読してほしい。