SUNDAY~田崎くんのツッコミ退魔日記~

作者 飛鳥 休暇

20

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★★★ Excellent!!!

ボケに突っ込んで魔を払う、となると、軽快なコメディを想像します。

しかし、本作はそうはなりません。

まぜ魔が生まれたのか。その背景に見えるどろりとした情念。それを払う方法もツッコミだけではないことが明かされます。

読んでいて悲しくなる場面もあります。軽薄な話だと思っていると見事に裏切られます。

それでも、です。

それでも笑いに意味はある。人間という存在は辛いから笑いに意味がある。少年が笑いを選んだ意味が胸にしみます。

読まれる際にはハンカチのご準備を。ちゃんと笑い泣かせますから。

★★★ Excellent!!!

漫才師を目指す明人は、ボケ(頭おかしいという意味ではなく、漫才における役割)で退魔を行うサンディーと出会い、ツッコミ担当の相方になる。
さらに「泣」で霊の心を昇華させる静香、「怒」で悪鬼を吹き飛ばす麗奈も絡んでくるのだが、この『魔』には実は秘密があって……?

すでに紹介させていただいたとおり、本作の除霊の方法は「喜怒哀楽」の感情そのものになります。時には1エピソード丸々漫才で魔を蒸発させ、時には「ブサイク」の暴言による怒りで退治します。登場人物の退魔方法が特徴的で楽しいです。
その中で「喜怒哀楽」の「喜楽」を主人公目線に据えているのは、喜びや笑いが一番強い感情なのだという筆者のメッセージなのではないかと感じました。事実、お笑いの劇場で人の笑いのエネルギーが視覚化するシーンがあります。笑いってすごいんです。どんなに絶望的な状況や怒りの吹き溜まりであっても、笑いがあれば次の瞬間みなハッピーになっているかもしれない。幸せへの縮地なのです。本作は筆者いわく「お笑い小説じゃなくてヒューマンドラマなんや!」ということですが、ヒューマンドラマそのものが実はお笑いなのかもしれません。たくさんの楽観性にあふれているものなのかもしれません。筆者の解釈による「ヒューマンドラマ」をぜひ楽しんでいただければと思います。

最後に私なりの見どころを。
それは、「熱さ」だと私は感じました。
出てくる登場人物がそれぞれ辛い過去を背負っていて、それらが重奏をかなでる形でクライマックスへと向かっていきます。そこで描かれるのは、登場人物たちの心の鼓動。そして螺旋。
クライマックスに至るまでに描かれてきたエピソードの全てがミキサーにかけられ、鮮やかな「みっくちゅじゅーちゅ」が出来上がります。結末は甘い甘い未来への一歩なのですが、それを仕上げるミキサーの音は実に「熱い」。
セリフ、行動、思考、最後の一歩の全てが… 続きを読む

★★★ Excellent!!!


リズムよく進む会話と、コテコテの関西弁。
漫才を見ているかのようなお話です。

一番魅力的なのは、喜怒哀楽が主人公達の目に可視化されるのですが、その表現です。
大爆笑が爆発だったり、悲しみは霧だったり……作者様の想像力の豊かさが窺えます。


お笑いとバトルの組み合わせの斬新さ。
個性的なキャラクターと能力。
興味を持った方は是非。
読み始めたら止まらない、かも!

★★★ Excellent!!!

一見不釣り合いな、お笑いと魔物(本作では情魔と呼ばれる)退治という冒険活劇を見事に融合させた作品。
その他にも、新たな仲間との出会い、大切な人との別れ、各人が抱える葛藤や悩みといったいくつもの要素を情感たっぷりに描いている。

作者のほかの作品にも共通して言えることだが、ストーリーの中にその世界観に引き込むのに有効な助走があり、読む手が止まらなくなる山場・見せ場があり、そして何と言っても最後は爽快感溢れるエンディングが待っている。実にエンターテイメント性に満ち、完成度の高い作品。

お笑い業界のゴタゴタが取りざたされる昨今にあって、「お笑いの力」を再認識させてくれる作品。ぜひ一読してほしい。