鬼の子『小太郎』
あいる
第1話鬼の子『小太郎』
昔むかしあるところに
星見村という
なんとも小さな集落がありました。
そこは夜になると星が美しくて夢のような場所でした。
そこに住んでいるのは
5人の村人と2匹の猫
1人の鬼の子でした
鬼の名前は『小太郎』
ひとりぼっちになってしまったのにはわけがありました。
ある日のこと
お母さん鬼と小太郎は
小さな小屋のなかで仲良くご飯を食べておりました
鬼の食べるものは
人間の子どもたち
しかし
お母さん鬼はどうしても
人間を食べることが出来ずにいたので小太郎を連れて
この集落の外れにやってきたのです
毎日毎日
木の実を拾ってきて食べるのですが
おなかいっぱいになることは
ありませんでした
人間の子どもを食べると
長いあいだ生きられるのですが
木の実ではその日1日生きるのが精一杯です
それでも
お母さん鬼は子どもに食べさせる、たくさんの木の実と自分が食べる少しの木の実をとるために毎日山を歩いておりました
少しの木の実しか食べていないお母さん鬼はいつしか病にたおれ
たった一人のかわいい息子を置いて死んでしまったのです
悲しみにくれる小太郎は生きる気力を失ってしまいました
だってまだ小太郎は7才になったばかりなんですもの
お母さんが残してくれた木の実もあとわずか
小太郎の命のともしびも消えかかっていたときです
小屋の外で何やら話声がします
隠れようとした時に扉が開きました
そこに立っていたのは
お母さん鬼によく似た女の人と二人の子どもでした
びっくりした小太郎は押し入れに逃げこみ ました
お母さん鬼によく似た人間のお母さんは
とても優しい声で、こう話かけました
「もしかしたら、春子ちゃんの子どもじゃないの? 」
「なんで? ぼくのお母さんの名前を知ってるの? 」
たまらず押し入れから顔を出した小太郎です
その昔、人間の子どもと鬼の子どもが出会い心を通わせた話を聞いたことがありました。
人間の子どもの名前は『はな』
そして鬼の子どもの名前は『春子』
ある夏の日のこと
『はな』は、この村にある綺麗な湖で一人遊んでいました。
身体が弱く学校に行くことができず
家で絵を描いたり、ピアノを弾いたりして長い時間をすごしておりました。
その日『はな』は湖を写生をしていたのです
誰もいない森はとてもしずかで、湖はキラキラと湖面を輝かせてなんとも美しかったのです。
そこへやってきたのが『春子』です
頭に小さな角があることに気が付きましたが
この鬼の子どもからは不思議と怖さを感じない『はな』でした。
「こんにちは、私の名前は、"はな"です」
鬼の子どもも恥ずかしそうに「わたしは"春子"」と言いました。
同じ年頃の二人はとても仲良しになりました。
くる日もくる日も二人は絵を描いたり、話をしたりして過ごしました。
ある日のこと、遠い村からやってきた鬼狩りの人間は二人の少女を見つけました。
しかも一人は"鬼の子"です
このままでは人間の子どもが危ないと、鬼狩りの大人は二人の前に現れました。
「鬼を退治しに来た、そばを離れてなさい! 」
わけもわからない『はな』でしたが、このままでは『春子』が危ないと鉄砲を向けた鬼狩りの前に立ちはだかったのです
「春子ちゃん逃げて! 」
大きな声で叫びました
やっと出来た大事な友達でした。
鬼の子どもでもたいせつなたいせつな友達だったのです
もちろんその日から『春子』は現れることはありませんでした。
そして今日です
やっと会えたのです
春子によく似た小さな鬼を『はな』は強く抱きしめました。
小太郎はお母さんとよく似た匂いのする人に抱かれて大きな声で泣き出しました
『はな』は優しくこう言いました。
「春子ちゃんの子どもならわたしの子どもとおんなじ、一緒に帰りましょう」
お話に続きがあるのかはわかりませんが……
星見村には5人の村人と2匹の猫
そして1人の鬼が仲良く暮らしているそうです。
おわり
━━━あとがき━━━
小学生の時に日記に書いた物語をヒントに書いた童話です。そこに書かれていたのは一人の人間の女の子と子どもの鬼が仲良くなるという短いお話でした。
鬼が悪者になるお話が多くあるので、ほんとうは優しい鬼もいるはずだと書いたものだということも書いていました。
10数年たったあとに大人になってから完結したということです(笑)
読んで下さりありがとうございました。
鬼の子『小太郎』 あいる @chiaki_1116
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