ゲーム世界に転生した主人公(職業:旅人)は、森で驚くべきことに未来の魔王を発見した。
行き倒れ寸前の無残な姿であった。魔王の美しい容姿、にあやかりたいという打算と、人間を滅ぼされるわけにはいかないという思いから、主人公は魔王を保護することを決意する。
一方、竜人である魔王スピカは人間に両親、親しい間柄だった者たちを殺されていたために、人間に対しい復讐心を抱いていた。
しかし、そんなスピカも旅をしていくうちに、主人公との間で絆が生まれ、人間すべてが悪ではないということを学んでいく。
徐々に互いの心が通じ合い、開かれていく・・・旅路で紡がれる甘くロマンチックな物語!!
なんて書いてみましたが、きちんとレビューをいたしますと、この作品ははじめから物語の主軸が魔王スピカから変動していないのが良い点だと思います。
主人公が思い切りのある甘やかしに、スピカの反応がいちいちかわいらしくて・・・ついついニヤニヤしてしまいました。
主人公の「頭を撫でる」という行動が何とも言えないほど好きなんですよね。
基本的に主人公視点で、変化がなかったのは少し物足りない気持ちもありましたが、それもこの作品の個性なのでしょう。
物語は完結してしまっていますが、もう少しサイドストーリーが見たかったかな・・・。
魔王なんて、本当は存在しない。ただただ、本当に優しい心が、怒りと悲しみに苦しんでいるだけだと思うんだ。
ゲームの中では、魔王だった。物語として必然の運命で、決して変えることの出来ない未来。
物語の主人公が現れれば、魔王は再び悲しみと苦しみの道を歩み、その先にただ殺されてしまう。そんな未来は、悲し過ぎる。
――笑って良い。楽しんで良い。
例え茨の道と知ろうとも、彼女の幸福のために彼はゲームを捨てた。物語と同じ道を進むことが興奮へ繋がろうとも、純粋なまでの笑顔に勝るものは無いのだから。
ゲームを、運命を知る彼に導かれるままに。
――物語は終わりを告げた。
新たなるイレギュラーの彼によって招かれたIfの世界で、彼女は別の道を歩む。心配はいらない。その隣を往く彼は、世界で最も最強なのだから。
儚く優しい少女へ、最高の幸せを、今ここに。
旅が始まる――。