第3話 咲いたのは何?

 あれから幾度も夏を超えて

 今、私はあの時の彼とは別の男性と一緒にいる。

 あの旅行のことは未だにバレていない。

 もし、あの時バレていたら退学になっていたかもしれない。よくもあんなことが出来たもんだ。バカだ。






 今の彼とはお互いに忙しく、なかなか会う時間が取れない。休日も合わないので仕事が終わってからの夜遅くに彼の家で会うくらいしかなかった。

 短い時間しか一緒にいれないのに、彼は直ぐに寝てしまう。疲れているだろうし仕方がないとは思うけれど、彼はどう思っているのだろう?



「ねぇ、どうして寝ちゃうの?」


「ごめん……どうしても寝ちゃうんだ……キミと一緒にいると……安心して……眠く……なる……ごめ……ん」


その感じ、知ってるよ。






 ある夜、また眠りそうな彼が何気なく呟いた。





「今まで生きてきた中で、今が一番幸せだ」




 私は彼と結婚した。





 遠い夏の日と今日の結婚は地続きだ。

 上手くいかなかったから失敗。じゃない。

 みんな繋がっている。苦くも甘くもバカでも。

 あの時の彼はどうしているだろうか?

 幸せを願う。

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夏思いが咲く ぴおに @piony

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