短編集

書く猫

男の娘とホモサーのお姫様

 あたしはホモたちから目を逸らして、地平線を見つめた。

 その向こうには都市があり、ホモサーの姫様と誤字姫様が住んでいる王城があり、男の娘たちの夜のクラブがある。しかしその中であたしが直接目撃したものは何もない。全部本から学んだものだ。

 本はいい。あたしには体験できない様々なことを教えてくれる。ホモサーの姫様の食いしん坊と誤字姫様のとんでもない誤字っぷり、そして男の娘たちの美しい愛情……全部本が教えてくれた。

 その中でも特に気に入ったのは、もちろん男の娘たちの話だ。優雅なドレス姿の彼らが集まって互いを愛する場面にはいつもドキドキする。


「ん?」


 ホモたちが急に鳴き始めた。あたしは現実に戻って、ロングヘアのかつらを被った。


「お兄……いや、お姉ちゃん!」


 急に現れたのはハッコちゃんだった。妹はいつもの明るい顔で坂道を走って登り、あたしの目の前で立ち止まった。


「ハッコちゃん、今日もたくさん誤字った?」

「うん! 今日はね、スモーク炭と誤字ったの!」

「流石だね」


 ハッコちゃんはお姫様たちに憧れている。このまま成長してくれたら、いつかきっとホモサーの姫か誤字姫になれるさ。

 あたしはハッコちゃんの頭を撫でてやってから、4人のホモたちと一緒に畜舎に向かった。ホモたちが仲良く一緒に歩いている風景にはいつも心が温まる。


「これで今日の仕事も終わり」


 ホモたちを畜舎に閉じ込めたら、あたしの日課は終わりだ。うちに帰ろう。

 藁と木でできた、小さくてボロボロな小屋。ここがあたしとハッコちゃんの家だ。生活するに必要最低限のものと、ベッド二つを除けば何もない。しかしあたしはここで安らぎを感じる。


「お兄……いや、お姉ちゃん!」

「ん?」

「今日もダンスの練習をするの?」

「もちろんさ。あたしはいつか立派な男の娘になりたい」


 暑い時も、寒い時も、ダンスの練習だけは忘れない。これはあたしの夢だ。いつか立派な男の娘になって、王都の夜のクラブにデビューしたい。どんな時もこの夢だけは忘れない。

 そしていつかはホモサーの姫様と誤字姫様に会う。その日を頭の中で描きながら、あたしは踊り始めた。

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短編集 書く猫 @kakuneko22

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