第4話 自己紹介(1日目・昼 その1)

「あなたの役職は『占い師』です」


そう表示されたタブレットを、私は眺めていた。


占い師…。確か夜に誰か一人を占って人狼か否かを知ることができるんだっけ。そういえば村人陣営にとって最重要の役職って言ってたよね?そんなものがなぜ私なんかに…。


右を見ると、林檎ちゃんが緊張とワクワクが入り交じった面持ちでゲーム開始を今か今かと待っている。左を見ると、凛くんはタブレットを見ながら考え事をしていた。何かの役職持ちになったのかな?こうして周りを見渡してみると、自信満々の人や、ちょっと不安な顔をしている人、緊張で顔が強張っている人など、それぞれ違った感情を抱いているのが見えた。


「皆様、役職の確認は終わりましたか?それでは、1日目・昼のターンを開始いたします。会議の時間は20分です。もしそれまでに投票の準備ができたなら、誰か一人が手を挙げて『投票』と発言してください。それでは、会議を始めてください」


そう言った後、スピーカーから「ブツッ」と音が聞こえ、なにも聞こえなくなった。



   *  *  *



「…あの、こういうのってまず自己紹介からいくやつなんですかね?」いきなり一人の男の人が手を挙げた。「僕、平野ひらの正保まさやすって言います。この館の近くの不動産事務所で働いています。よろしくお願いします」


その手を挙げた平野さんが自己紹介をすると、それに続いて他の人達も自己紹介を始めていった。


「私、浦目うらめ紫ゆかりって言います!17歳です!よろしくお願いします!」浦目さんは女子高生らしい。とても容姿がキレイで、モデルやってるんじゃないかと疑いたくなる。


「俺は矢島やじま悠人ゆうと。農家の息子。よろしく」次に自己紹介をしたのは、性格悪そうな少年だった。私が一番嫌いなタイプの人だ。



こうして私達を含め自己紹介は全員終わった。ここにいる人をまとめると、それぞれこんな人だった。



比奈ひな 私。


芦屋あしや林檎りんご 林檎ちゃん。


東雲しののめ凛りん 凛くん。


平野ひらの正保まさやす 最初に自己紹介した人。不動産の仕事をやっている28歳の男性。独身。


浦目うらめ紫ゆかり 女子高生。とても美人。


矢島やじま悠人ゆうと 農家の息子である男子中学生。性格悪い奴。


前田島まえたじま信吾しんご 30代の会社員。地元がこの村で、最近帰省してきたらしい。


張拿じゃんだ福太郎ふくたろう 43歳のおじさん。1年前に引っ越してきて、時計台の管理人をしている。変な名字。


菊山きくやまあみり 25歳の女性。



「じゃ、みんなの自己紹介が終わったところで、まず占い師を確認したいんだけど、占い師いる?」


信吾さんが聞いてきた。えーと、私は占い師だから、手を挙げればいいのかな?


「はい」


「はい」


手を挙げたのは、私以外にもう一人いた。


「えっと、占い師です」私はそう言った。すると、


「いや、僕が占い師だ」その人━━━張拿福太郎さんは、私に反論してきた。


「え?確か占い師って一人だよね?どういうこと?もしかして配役ミスったとか?」林檎ちゃんが動揺している。違う。確かに占い師は一人だ。つまり私に対抗している福太郎さんは、村人陣営じゃない…。


手を挙げている福太郎さんと目があった。福太郎さんは疑いの目で私を見てくる。私は福太郎さんを睨み返した。



こうして、占い師が二人名乗り出て、1日目の会議がスタートした。



   *  *  *



「ふぅ…」


僕はマイクの電源を切った。


「進行状況はどうだ?木下」


館長の奥寺おくでらさんが僕に話しかけてきた。


「今、1日目の会議が始まって、占い師が二人名乗り出ているよくある展開になっているところです」


「ほう、ところでルールは『きちんと』説明したんだろうな?」


「いえ、基本的なところしか話してないです。だって最初に全部言っちゃうと、面白いものもつまらなくなっちゃいますからね…フフ…」


「…よく分かってるじゃないか。それでこそこの『人狼ゲーム』を管理するものの一員だ」


スピーカーの奥でこんな会話が行われているのを、参加者達は知る由もない。



   *  *  *



その頃、『人狼の館』の入り口に一人の男が立っていた。


研究員のような服装をしている。左胸の位置に付けられた名札が反射して、『花道』という文字が見えた。





現在の状況 


比奈


芦屋林檎


東雲凛


平野正保


浦目紫


矢島悠人


前田島信吾


張拿福太郎


菊山あみり


残り9/9人

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The disaster of wolf @PONY-ARASHIRO

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