神の視点

 テレパシー使いである妹を通して送られてきた、嵯峨野佑の思念。

 その全てを受け取った神尾は、ふらふらとその場にへたりこんだ。

「どうして、どうしてこんな事に……」

 妹はもはや、そんな醜態をさらす兄を一瞥もせず退出。

 今や神尾の腹心にして恋人である倉沢春花が、気遣わしげに彼を抱き込む。

 だが、最大の理解者だからこそ、彼女にはわかってしまっている。

 この抱擁で、彼の苦悩が晴れる事は絶対にない。

 

 小谷辺から離れ、祇清市に足を踏み入れた時に思ってしまった。

 もしも、僕と同じような状況に立たされても、心の強い人なら違った結末があるのではないか。

 それを、

 見たい、

 と。

 

 小谷辺で真実を知ってから、神尾の魔法に対する思考感度はますます高く、ダイレクトになっていた。

 そして、創造主たる彼の意に沿わねばならない如月光輝は、その天啓を受け取るや、羽部に接触した。

 そして、今回の祇清市で起きた全てをお膳立てした。

 愛する主の為に。

 

 結果、神尾は、彼の与り知らぬ所で憎しみを抱かれ、その一派の襲撃を受ける事となった。

 天田と沖村は、友が魔物の群れに喰われるのを決死の思いで食い止めた。

 そして神尾は、自分達を殺そうとした者達から、必死に春花を守った。

 

 今度も“主人公”が勝った。

 それだけの話だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

陰キャの覚醒(めざ)め 聖竜の介 @7ryu7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ