恐れてはいけない、泥沼の如く濃いストーリーに。
畏れてはいけない、作者の文才に、この世界に。
以下個人的な感想&長文です。ネタバレはないと思いますが、僕に文才は無いので悪しからず。
実は、この物語はルート分岐があり、自身1ルートしか読了しておりません。しかし、Reviewを書かざるを得なかった。この物語への感想を抑えずには居られなかった。一部外部作品を挙げているので、信者様からは批判を受け得るのだが、ご了承願いたい。
この物語を読んでいた時、様々な作品を思い出した。まず思い出したのは、Fate/stay nightだ。分岐し、主人公の感情を深く、深く掘り下げられる彼の作品に、この主人公の揺れ動く感情を重ね合わした。
そしてその感情を書き認めるその構成に、彼の文豪、夏目漱石の作品群を思い出した。主なる感情と派生していく感情を、きめ細かく書き示す文豪の文章に、この作者の、様々な感情を散らした文体に、その魅力があるのかも知れない。
そして最後に、INCEPTIONを思い出した。まさしく、切り替わり続けるその世界観は、彼の映画の如く演出だろう。
が、残念ながら、この作品の星数は少ない。なぜだろうか。それは、この作品がその魅力さ故に放つ、異質な雰囲気を持っているからだ。
近年のweb小説は、安易なキャラ付け、字面のインパクトばかりが横行する導入などなど、多くの"なろう系"と呼ばれるものが多く存在している。わかりやすい格好良さ、可愛さ、エロさ、そして賢さや面白さ(funnyといった方がいいだろう)がまるで滝のごとく溢れかえっているのである。
その中で読まれる作品というのは、上記のどれかが極まっていたり、スッと一本筋の通っただけのものが多い。
つまるところ、重く、引きずり込むかのようなこの作品は、読者達のその変に磨き上げられてしまったセンスに弾き出され得てしまうのだ。
なんと非常に残念なことであろうか、斯くも素晴らしい生けるが如き叙情的文章が、埋もれてしまっている悲しさは。
だからもう一度繰り返そう。恐れないでほしい、畏れないで欲しいと。
一幕、中盤まで読んでの感想です。(本当は読み終えてからレビューしたかったんですが、ちょっと最近読む暇がないので先にレビューさせて頂きます)
まずこの作者はプロ、またはセミプロとしか思えないくらいに構成力が凄い。物語創作について何かしらの勉強をしたか、似た経験があるとして、それでも、とても素人が書いたとは思えない。
文章も非常に巧く、語彙力の高さも伺える。それ故とっつきにくい部分もあるが、とにかく騙されたと思って十三話までは是非読んで欲しい。
作者についての称賛はまだまだあるがこの辺にして、本題の筋書き。
作者がどれだけ頭を捻らせ悩ませたかを思わせる、知的で、濃厚で、静謐で、熱いストーリー。主人公に感情移入してしまったら最後、狂っていく描写を存分に味わい、癖になる甘美な絶望を共に味わってください。
仲間の不可解な失踪が途絶えぬ中、叫び出したくなるほどの展開が待っています。私のようにペーターに心を奪われていた場合、日常生活に支障が出ます。愚者になった途端、愛おしさも倍増です。危なっかしく、手に余るペーターがとにかく可愛い。
似たような作品が溢れかえるこの世界(WEB小説)では、唯一無二のオリジナリティを誇っていると思います。
この作品はWEB小説主流のライトノベルではなく、その為か、何にでも言える事かもしれませんが「本物の作品」ほど世に出ない、(現状では)多くの人に見られない=決して駄作ではない、それを表す作品です。
もし何かのきっかけでこの作品が日の目を浴びた瞬間、称賛の嵐が吹き荒れる事は間違いないでしょう。カクヨムはこの作品を一刻も早く宣伝すべきだと思います。